2017年12月14日(木)

中国BYD株急騰 エコカー新政策で利益独占?

コラム(ビジネス)
自動車・機械
中国・台湾
2017/10/13 9:36
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 中国エコカー最大手の比亜迪(BYD)の株価が、9月10日前後を境に急上昇を続けている。香港証券取引所に上場する同社の株価は一時、80香港ドル(1香港ドルは約14円)を突破し、過去1カ月でおよそ75%も上昇した。中国のエコカー新政策が今後、BYDに有利に働くとみられているためだが、それにしてもあまりに急な値動きの背景には何があるのか。

BYD経営トップの王伝福・董事長は、中国の自動車政策決定にも強い影響力を持つ。(9月、広東省深圳市の本社)

BYD経営トップの王伝福・董事長は、中国の自動車政策決定にも強い影響力を持つ。(9月、広東省深圳市の本社)

 株価上昇のきっかけは、9月9日に中国で開かれた自動車産業フォーラムでの政府高官による発言だ。英仏に追随し、中国政府も今後、ガソリン車の禁止に向けて工程表の作成に着手した事を明らかにしたからだ。

 9月11日のBYDの株価は4.6%高の49.4香港ドル。高官発言を受け、エコカーの中国最大手でエコカー向け電池でも最大手を争うポジションにつけるBYDに、さらなる“買い”が入ったのは明らかだった。

 勢いを決定付けたのは9月28日に政府から発表された環境規制「NEV規制」の導入だ。同規制は世界で最も厳しい規制とされ、中国で販売するガソリン車の販売量に応じて、各メーカーは19年から一定量の電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を生産しなければ、罰せられることになる。

 もし罰金が嫌ならば、メーカー間の売買取引で「クレジット」と呼ばれる権利を購入すれば、自社で生産できなかったEVやPHVの穴埋めをして規制をクリアすることも可能。BYDの急激な株価値上がりの背景はまさにそこにある。

 BYDはもちろんガソリン車も販売するが、EVやPHVのエコカー販売も多い。そのためNEV規制をクリアできるばかりでなく、余ったクレジットを他社に売って稼くことができるのだ。

 今回のNEV規制の計算式に当てはめると、BYDの場合、2016年はEVとPHV合わせて9.6万台を販売したので、ガソリン車の販売分を差し引いても、29万ポイントが余る計算になる。

 中国政府が今後整備する予定のクレジットの取引市場で、1ポイント=1万元で取引するのが妥当ともいわれる。仮に1ポイント=1万元ならばBYDが保有する29万ポイントは29億元(約500億円)に相当。業界では、NEV導入後の3年間で、BYDはクレジットの売却で少なくとも140億元を稼げるとの試算があるほどなのだ。

 中国政府は、エコカー市場で外資を排除して中国メーカーに多額の補助金を拠出し、EVなどの販売を支援して市場を独占させてきた。なのに今度は、世界で最も厳しいNEV規制を外資の反発をはねのけていきなり導入するという。

 工場建設や商品企画など十分な準備時間を取らせず、NEV規制がクリアできなければ、罰金もしくは中国メーカーから割高なクレジット購入を義務付けるというのだから驚くばかりだ。

 「この仕組みならばBYDの株価は上がって当然だろう」(中国の証券市場関係者)。これがEV革命と言われる中国の実態だ。

 自動車業界に参入したばかりのBYDに08年に出資し、大株主となったのが米著名投資家のウォーレン・バフェット氏だった。

 「なぜ、おんぼろの中国企業なんかに投資するのか」といわれて10年が経つ。こんな状況を予想していたのだろうか。バフェット氏の高笑いも聞こえてきそうな気配である。

(広州支局 中村裕)

[日経産業新聞 2017年10月13日付]

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