2019年6月16日(日)

新規就農 官民で応援 大阪府×マイファーム、研修半年
奈良県×近大農学部、ICT活用し効率農法

2017/10/12 2:00
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関西の自治体が企業や大学と連携して新規就農の支援に動き出した。大阪府は体験農園を手掛けるマイファーム(京都市)と組み、会社員らが仕事を続けながら農業に習熟できる事業を始めた。奈良県は近畿大農学部とICT(情報通信技術)などを使った農法の普及を図る。全国を上回るペースで耕作放棄地が増える関西。新たな担い手を育成し農業振興を図る。

9月末、大阪府とJAグループ大阪の就農支援事業「新規就農 はじめの一歩村」の開村式が富田林市で開かれた。松井一郎知事は「都市型農業に参入する次の世代の生活を成り立たせる仕組みが必要だ」と話した。

研修生14人のうちの一人で、大阪市で働くプログラマーの須村哲也さん(33)は「自分で作ったものを人に届ける仕事をしたかった」と参加理由を語る。研修生は来年3月までの半年間、富田林市内の農地約5千平方メートルで週末などに指導を受ける。研修料は3万円。農薬の使い方や土壌の作り方など農業技術を習得するほか、農地の貸し借りの制度など農業経営に関する知識を学ぶ。

府によると「独立に必要な最低限の知識を身につけてもらう」。独立する研修生には農地を紹介・斡旋し、もう少し技術や知識を向上させたいと考える研修生には農業生産法人や農家への就農を支援する。

府が事業を委託したマイファームは耕作放棄地を貸農園に再生する事業のほか、2011年から週末に社会人向けの農業スクールを展開する。関東と関西、東海に拠点を持ち、卒業生は1000人を超え、うち500人が就農した。16年度の売上高は6億6千万円。

大阪府では15年度に101件の新規就農の相談があったが、実際に就農したのは2人。現在の職に就きながら農業を学べる場が必要と判断した。マイファームの西辻一真社長は「都市部で増える就農希望のビジネスパーソンやシニアの受け皿になれば」と期待する。

就農者拡大に向けて大学と組むのは奈良県。近大農学部が得意とする農法を未経験者でもわかるようにマニュアル化し、就農希望者らに配る。

具体的には土を使わず、ワイシャツなどのポリエステル生地をほぐして液肥を散布し、大和野菜やタンポポを栽培する手法を取り入れる。農業用ハウス内の温湿度や生育データを分析し、肥料の調節や収穫に適した時期を人工知能(AI)が自動で判断。トマトやメロンを安定的に生産できるハイテクも導入する。

自治体が大学の農業技術をマニュアル化し、それを取り込んで農業活性化に取り組むのは珍しい。重岡成・近大農学部長は「地域と連携し、ポスト『近大マグロ』ともいえる『なら近大農法』を確立したい」と話す。

兵庫県は1千万円以上かかることが多い新規就農者らの初期投資を抑える事業を15年度から実施。ハウスや暖房を新規就農者らに貸すJAなどに整備費の3分の1~2分の1を補助する。利用は2年で100件を超え、17年度は48件を見込む。

同県加古川市の高見泰さん(45)は同制度を活用し、トマト栽培用に1000平方メートルのハウスをレンタルした。温度や日射量をモニタリングするシステムも導入。「トマト1本で勝負する見通しが立った」と感謝する。

近畿の耕作放棄地、20年で倍増

近畿の自治体が就農支援に力を入れる背景には耕作放棄地の増加がある。2015年の近畿の放棄地面積は2万2247ヘクタールと1995年に比べて倍増した。

和歌山大の大西敏夫教授(農業経済学)は「(農業生産条件の不利な)中山間地域が全国よりも多いため」と指摘する。農業集落に占める中山間地域は全国で約50%だが近畿は約55%という。

後継者不足も一因だ。近畿の農業就業人口に占める60歳以上の割合は約80%と全国(約77%)をやや上回る。就労条件のいい阪神間などの都市部を近くに抱え、若者が都会で就職する傾向が強い。

大西教授は「大消費地に近い近畿産農産物のニーズは大きく、担い手を育てれば耕作放棄地を活用できるようになる」と指摘する。定年退職者の間では就農希望者も増えており「実際に就農に導く施策がカギ」と話す。

(大阪地方部 田村城)

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