「豊かな高知」表現 デザイナー 梅原真さん(語る ひと・まち・産業)
風景浮かぶ商品 生み出す

2017/10/11 12:00
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■梅原真さん(67)は大手企業からの仕事はほとんど受けない。高知を拠点に、もっぱら地方の1次産業のデザインを手掛ける。

 うめばら・まこと 1950年高知市生まれ。大阪経済大学卒業後、高知県のテレビ番組などの制作会社に勤務。29歳で退職しアメリカ大陸を横断。80年に梅原デザイン事務所設立。武蔵野美術大学・客員教授。

うめばら・まこと 1950年高知市生まれ。大阪経済大学卒業後、高知県のテレビ番組などの制作会社に勤務。29歳で退職しアメリカ大陸を横断。80年に梅原デザイン事務所設立。武蔵野美術大学・客員教授。

「生まれたのは高知城のお膝元。家の近くには鏡川が流れていた。夏の間は毎日川に遊びに行った。街路市の日曜市を歩くのも大好きだった。農家の人が段ボールの切れ端に書いた『エレガントなお味です』『姿ブス味美人』などのうたい文句は見ていて飽きなかった。高知での子ども時代は、ドキッとする体験にあふれ、自分の中に多くの引き出しをつくってくれた」

「原点になった仕事が『土佐の味 ふるさとの台所』だ。高知の郷土料理を紹介した本で、取材・編集・デザインすべてを担当した。当時、県内にあった53の市町村をくまなく回り、実際に食べておばちゃんたちからレシピを聞く取材を通じて高知の豊かさを知った」

「1次産業のデザインを本格的に手掛けるようになったのが、一本釣り漁師から持ち込まれたわら焼きカツオたたきのデザインの依頼だ。『漁師が釣って、漁師が焼いた』というコピーをつけたことで飛ぶように売れた。デザインを通じて1次産品や加工品に新しい価値が生まれ、商品が売れることで風景が残る。『1次産業×デザイン=風景』という式が固まった」

■風景そのものを作品にした美術館や古新聞を再利用してつくる新聞バッグなどは世界各地に広がる。

砂浜美術館の考え方は世界各地に広がる(高知県黒潮町)

砂浜美術館の考え方は世界各地に広がる(高知県黒潮町)

「高知県大方町(現・黒潮町)で1989年、長さ4キロの砂浜をミュージアムに見立てた『砂浜美術館』を始めた。当時はバブル経済の真っ盛りでリゾート法による開発計画が各地で進んでいた。あえて『何も造らないコトをつくる』ことを選んだ。地元の人が『砂浜しかない』と思っていた場所には、Tシャツアート展で約3万人の人が集まる。何もないと思われている場所からでも、価値をつくり世界にメッセージを送ることができる」

「今も地方創生が叫ばれるが、様々な金塊がつくられた当時に比べて、地方で考える力がついたようには思えない。借り物ではなく土地の個性を生かしながら経済を回していく方法を考え抜く必要がある。マイナス1×マイナス1はプラス1になる。見方を変えて新しいモノを生み出す。行政も経営者もデザイン的な思考が欠かせない」

■大事にしているのが、土地の力を引き出すデザインだ。

「地方が豊かでなければ、その国は豊かではない。かつては地方には良くも悪くも個性があったが、国土の均衡ある発展という旗印の下で個性を失ってしまった。高知は経済の面では見劣りするがそれも個性で、だからこそ見えるものがある。高知は土地や人の力がまだまだ強く感じられる場所で、そこに住んでいるのは誇りだ」

「地方はずっと都会の商品や仕組みをまねてきた。これからは逆に地方から都会に向かう流れをつくりたい。荒れ果てた山を再生してひとつの産業になったものに『しまんと地栗』がある。商品を売るだけでなく生産現場に足を運んで泊まって、風景全体を味わってもらうしかけもつくりたい。これからも土地や人の根っこからわき出るものをデザインしていきたい」

■森林率1位、逆手に発案

《一言メモ》高知県は面積に占める森林の割合が84%で全国トップ。それをマイナスとみるのではなく、おもしろがって地域の活性化にも生かそうと梅原さんが2009年に立ち上げたのがNPO法人「84(はちよん)プロジェクト」だ。これまで「CO2の缶詰」やポケットに入れて香りを楽しむヒノキチップなど多くの商品やアイデアを考案してきた。

昨年からスタートしたのが、「自伐型林業」の推進団体とのコラボレーションだ。自伐型林業は、個人や家族単位で小規模に間伐や輸送を手掛ける仕組み。初期投資が少なくてすみ、環境負荷も小さいといった特徴がある。「日本一の森が生き生きしていないと高知にいて楽しくないやん」と話す梅原さん。森林と人の新たなかかわり方もデザインしようとしている。

(高知支局長 高田哲生)

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