老舗のさわかみ投信、「つみたてNISA」にNO
導入見送りのワケ
「来年から始まる"つみたてNISA"に関しまして、制度開始時の導入は見送ることにいたしました」。独立系運用会社のさわかみ投信が2日、唐突とも言えるお知らせを公表した。10月に入り、積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」の口座開設申し込みが始まった。来年1月の本格始動に向けて運用・証券業界が盛り上がりをみせるなか、運用残高が約3000億円に上る老舗運用会社が「NO」を突きつけたことが話題をさらっている。
同社は見送りの理由を「運用会社としてやるべきことが他にあるから」と説明する。新制度の導入にかかる経営資源を、超長期の安定した運用成績を上げる「本業」に振り向けないと、長期投資は促せないという思いがある。
草刈貴弘・取締役最高投資責任者は「税制優遇に期限がある限り、売りを誘発する可能性がある。長期投資を促していると言えるのか」と疑問を呈する。同社は2013年末に証券優遇税制が廃止されるまでの2カ月間で約350億円の解約売りが殺到した苦い経験を持つ。
つみたてNISAは年40万円までの投資額なら運用益にかかる税金が20年間非課税になる制度。だが、その制度の有効期限は37年までと区切られている。証券会社の業界団体、日本証券業協会はNISAの恒久化を繰り返し求めてきたが、財務省が首を縦に振る気配はみられない。
運用・証券大手はつみたてNISAを、課題である若年層取り込みへの息の長い取り組みと位置づける。だが経営体力に劣る中堅は低コストのインデックス投信ばかりが並ぶ現実に「黒字化のメドが立たない」と漏らす。金融庁の肝煎り政策とわかっていても、業界は一丸になりきれていない。
長期に非課税のメリットを受けられるつみたてNISAは本来「貯蓄から資産形成」の追い風になりうる。しかし、制度の恒久化問題や金融機関の収益面の理由でその流れが途絶えてしまっては元も子もない。つみたてNISAを真の意味で長期投資につなげるには、収益面での均衡点を探る必要がありそうだ。(野村優子)
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