2017年12月16日(土)

神鋼・日産…相次ぐ不適切行為 日本企業に何が

品質不正
自動車・機械
環境エネ・素材
2017/10/10 15:51
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 偽装、隠蔽、改ざん、捏造(ねつぞう)。日本企業のコンプライアンス(法令順守)が揺れている。神戸製鋼所は8日、アルミ製部材の品質データを長期間にわたり改ざんしていたと発表。日産自動車では9月、無資格の従業員が行った完成検査を書類上は有資格者が手掛けたように偽装していたことが発覚した。なぜ今、こうした不適切な行為が多発するのか。

記者会見で頭を下げる神戸製鋼所の梅原副社長(左)ら(8日午後、東京都港区)

■一般の人々との「意識の落差」

 「我が家のクルマ、大丈夫かな。怖い」「飛行機もアルミ使っているの?しばらく乗れない」「またリコールかよ。面倒くさいな」――。神鋼の発表の後、ツイッターなどのSNS(交流サイト)では不安や不満の声があふれた。同社のアルミ部材は、新幹線や旅客機、トヨタ自動車やスバルなどの自動車、10日午前に打ち上げられたロケット「H2A」など幅広い分野で採用されており、一般の人々は身近な日本製品への信頼が揺らぐ危機的事態と受け止めた。

 これに対し、不適切な行為の当事者と周辺取引先の考え方は異なる。神鋼も日産も会見では「安全性や品質に問題は起きていない」とした。取引先などからも「オーバースペックの業務を省いただけであり、世界標準を上回る仕事はしっかりやってもらっている」という声が聞こえてくる。不適切なのは形式だけで、実質的には問題はないのだから、大ごとではないという意識が、インナーサークルでは強くなる。

 こうした、一般の人々との意識の落差、とくにミドル以上の主力従業員の罪の意識の薄さが、不適切行為多発の背景にある。

■企業にはびこる不適切な「カビ」

 「データ改ざんはカビだ」。企業の不正行為に詳しい郷原総合コンプライアンス法律事務所の郷原信郎弁護士は、こう話す。

 高度経済成長、バブル期、失われた20年。いずれの期間も、相手の立場を推察し擦り合わせることが日本企業のビジネスの流儀だった。「競合相手を驚かせたいので、今度の部品は、できればこのぐらいのスペックが欲しいのですが」「できないかもしれませんが頑張ってみます」「よろしく頼みます」。取引関係を深めて相手への信頼が高まるほど、こうした擦り合わせの領域は広くなる。

 規制水準を超える部分は、努力目標なのだから、達成できなくても仕方が無い。それよりも納期厳守やコスト抑制で報いた方が、取引先に対して誠実だ。日本企業の不適切行為の原因は、そもそもはこうした現場の推察によるものが大きいという。

 小さなデータ改ざんでも、一度手を染めると修正は難しくなる。書類の不備が露見しないように隠蔽し、それを後任に「あとはよろしく」と引き継いで、後任も取引先の信頼に応えるべく改ざんを繰り返す。郷原弁護士は、こうした悪循環を「カビ型問題行為」と名付け、どの日本企業でもカビが繁殖する可能性があると警鐘を鳴らす。問題が長期間にわたって継続している「時間的な広がり」と、組織内の多数の人が関わっている「人的な広がり」がある点で、カビ型問題行為には内部監査などの自浄作用が働きにくいという。

■「コンプラ重視」が表面化促す

 カビには人体などに有益に働くものもあるが、有害なカビが繁殖すると大きな問題になる。これまでなら日陰で繁殖していただけだったカビが表に出てきた背景にあるのは、昨今のコンプラ重視の社会的要請だ。ミドル社員の罪の意識は低くても、若手は「これはちょっとまずいのでは」と疑問を持ち、告発に至る。あるいは、実態に即した安全・品質水準に修正しようという経営トップの意向を受け、取引先に契約更新を持ちかけたことろ、相手企業の担当者が「コンプラ違反への加担」を恐れて、これまでの経緯の公表を迫る。

 こうして一企業の事案がクローズアップされると、「当社も大丈夫だろうか」と別の企業でもカビの調査が始まり、不適切行為がまたぞろ発覚する。「このままでは、世界から日本企業は何をやっているのか、といわれる。政府や経済団体が音頭を取って、一度にカビの調査をする必要がある」(郷原弁護士)

 胞子が1つでも残れば、カビは再び繁殖する。場合によっては外部の力を借りながら、徹底的に胞子を取り除くことが、不適切な行為が発覚した企業の取るべき道だ。安全性・品質には問題ない、の一言で済ませてはいけない。

(石塚史人)

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