2017年12月16日(土)

スペイン分裂 阻止できるか
政府の取る道は3つ

コラム(国際・アジア)
ヨーロッパ
The Economist
(1/2ページ)
2017/10/11 6:30
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The Economist

 ある民主主義国が警官隊を出動させて、老婦人の頭を警棒で殴って投票を阻止しようとしている様子を見れば、それは何かが恐ろしく間違っているということだ。スペイン北東部カタルーニャ州によると、10月1日に実施した同国からの独立を問うた住民投票で、900人近くが警察の取り締まりによりけがをしたという。

 憲法上認められない住民投票を強行したのがカタルーニャ州政府だったとしても、ラホイ首相が見せた対応はスペインを1981年に起きたクーデター未遂事件以来の憲法上の危機に直面させている。

10月8日、カタルーニャ州の州都バルセロナでは、独立反対を主張する市民による大規模デモが起きた=AP

10月8日、カタルーニャ州の州都バルセロナでは、独立反対を主張する市民による大規模デモが起きた=AP

 ラホイ首相は、頭を殴れば独立派が沈黙すると思っていたとしたら大間違いだ。むしろカタルーニャ州との膠着状態を招いただけで、敵を勢いづかせ、自分を支持している人たちに衝撃を与えた。10月3日、スペイン屈指の裕福な地域であるカタルーニャ州は、独立を求める人々の動きでまひ状態に陥った。数十万人がデモに繰り出し、怒りをあらわにした。

 カタルーニャ州が独立することは、スペインにとっては悲劇だ。国内第2の都市を失い、バスク地方の独立をも招くかもしれない。カタルーニャ州にとっても、独立することはマイナスだ。だからこそ半数以上が反対しているのだろう。

■国家分断への歴史的恐怖

 だが、もし独立すれば、欧州の他の地域でも独立機運が盛り上がる可能性がある。スコットランドの独立運動が再燃するのは間違いないし、北イタリアや仏コルシカ島、独バイエルン州などでも火がつくかもしれない。危機がこれ以上高まるのを防ぐには、双方とも憲法にのっとった決着を改めて目指す必要がある。だが両者は対立を深める一方で、カタルーニャ州は今にも一方的かつ違法な独立宣言を強行しそうだ。

 スペインには、国家分断への歴史的な恐怖がある。カタルーニャの独立運動は、30年代に内戦を引き起こした一因だった。国王フェリペ6世が先日、異例のテレビ演説に踏み切り、カタルーニャ州の指導者たちが78年に制定された憲法をほごにしたのは無責任であり背信行為だと非難した。その怒りに多くのスペイン人が共感したのは間違いない。そもそも、カタルーニャ人は78年の合意を圧倒的に支持したのだ。この憲法は民主主義を定着させ、繁栄をもたらし、カタルーニャを含め各地に大幅な自治権を与えた。

 安定した民主主義国では、法律に従うことが求められる。そうすることで民主的な自由が守られるのであり、少数派が不満を表現する自由も保証される。バルセロナの活気を知っている人なら誰もカタルーニャが弾圧されているとは思わなかっただろうが、住民投票での出来事を見てその印象はひっくり返っただろう。

■独立派は4割台にとどまる

 帝国が崩壊した場合などごく一部の例外を除き、世界は総じて地方の民族自決よりも国家の結束を好む。ソ連崩壊で解放された多くの国が欧州連合(EU)に加わったが、最近のEUは慎重だ。独立しても、EUに加盟申請さえすればすぐ加盟できるわけではないとくぎを刺している。カタルーニャは、スペインの支持がなければEU単一市場には加盟できないだろう。

 こうした理由からカタルーニャ州のプチデモン州首相が独立を訴えても説得力に欠けるし、住民から正式に独立を宣言する権限を与えられていると主張することもできない。彼は、同州議会で十分な議論もせずに、今回の住民投票を実施するための法案をぎりぎりの過半数で強引に成立させた。従ってこの法律には危うさがある。

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