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食育 異国の体験が原点 「菊乃井」村田吉弘さん(もっと関西)
私のかんさい

2017/10/10 17:00
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 ■大正元年創業の京都の「菊乃井」3代目主人、村田吉弘さん(65)は老舗料亭の長男として生まれた。日本料理を広めるため世界中を飛び回るが、初めから志した道ではない。

 むらた・よしひろ 1951年、京都市出身。立命館大を卒業し、93年に「菊乃井」を継いだ。2004年にNPO法人「日本料理アカデミー」を設立するなど、日本料理の情報発信にも取り組む。12年に現代の名工、13年に京都府文化功労賞。
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 むらた・よしひろ 1951年、京都市出身。立命館大を卒業し、93年に「菊乃井」を継いだ。2004年にNPO法人「日本料理アカデミー」を設立するなど、日本料理の情報発信にも取り組む。12年に現代の名工、13年に京都府文化功労賞。

 小学校から大学入学まで出身地の京都市を離れることはなく、このまま料亭の跡継ぎに収まるだろうと周囲も受け止めていた。当たり前の人生は面白くないと思い、あえてフランス料理を学ぼうと決意。立命館大4年で現地へ留学した。

 日本の場所すら知らないフランス人が少なくないころだった。友人たちは「コース料理はフランスにしかない」と言う。懐石料理の存在を伝えても、興味を持たれることはない。日本料理を認めてもらうことをライフワークにしようと心に決めた。

 ■半年の留学期間を終え、修行先に選んだのは名古屋の料亭。3年間、調理や運営の方法を学んだ後、京都市に「菊乃井木屋町店」を開いた。試行錯誤を繰り返しながら、独自のスタイルを追究していく。

 開店当初は売り上げがゼロの週もあり、客席で1人、和洋中を問わず料理書を読みあさった。自分には師匠と呼べる人はおらず、自力でアイデアをひねり出すしかない。父の友人だった京料理店「たん熊」先代の「思うようにやればいい」との言葉に押され、様々な調理法に考えを巡らせた。

 食材と調味料を入れた袋を真空密閉して加熱する「真空調理」は、フランスで身につけた手法の一つ。100度以下の調理で肉類などが軟らかく仕上がるほか、少ない量の調味液でも食材に均等に浸透する。こうした調理法は今、各地の厨房で採り入れられている。

 ■店が軌道に乗ったころ、日本とは少し異なるフランスの料理人事情を改めて思い起こした。異国での体験は、地元食材の魅力発信と食育への取り組みの原点となっている。

フランスに留学した大学4年のころ(1972年)
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フランスに留学した大学4年のころ(1972年)

 フランスで料理人は客に料理をふるまうだけでなく、技術や感性を通じて社会に貢献する存在だった。地域で生まれた素晴らしい食材を絶やさないよう、おいしい料理に仕上げ、提供先として地元の人々も忘れないことで、地産地消や外部への出荷につなげる。1次産業の力になることも我々の務め。保存されたままの種子の栽培を農家にお願いするなどして京野菜も復活させた。

 子供たちは、地域で生まれた新鮮なコメやみずみずしい野菜などで作られた食事を取ることで、地元への誇りも感じられるようになる。京料理のような高級なものでなく郷土料理を伝えていけばいい。後に京都の学校給食を「一汁三菜」という和定食風の献立にしてもらった背景には、そんな思いがあった。

 ■日本の料理や農産物を世界に打ち出す第一歩として2004年、京都市に料理店主などを集め、日本料理を科学的に研究する「日本料理アカデミー」を設立。国際社会へのPRにも努め、13年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は「和食 日本人の伝統的な食文化」を無形文化遺産に登録すると決めた。

 11年の東日本大震災で元気をなくした日本を食文化の力で盛り上げようと、登録に向けて京都府に働きかけた。府だけでなく国や経済界の理解も得られ、ユネスコの決定に結びついた。

 既に各国で日本料理の店は数多いが、多くの店の厨房に日本人の料理人はいない。「なんちゃって和食」を批判する気持ちも分かる。ただ、それも日本食の一つと認める度量を持ってはどうか。

 世界各地にまかれてきた日本料理の種は今ようやく「苗」になった。首をかしげたくなる料理という「余分な葉」もたくさん出すが、全て取り去れば「大木」に育たない。木の形が変であれば、アカデミーの研究成果を基に形を整えてあげればいいと思う。

(聞き手は大阪社会部 宗像藍子)

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