原発事故で国に再び賠償命令 福島地裁、2900人対象
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福島第1原子力発電所事故を巡って福島県内外の住民約3800人が国と東京電力に損害賠償を求めた集団訴訟の判決が10日、福島地裁であった。金沢秀樹裁判長は「国は巨大津波を予見することが可能だった。東電に対策を命じていれば事故を回避できた」として国の賠償責任を認めた。原告約2900人に計約5億円を支払うよう東電と国に命じた。

全国約30件の同種訴訟で国の賠償責任を認めたのは3月の前橋地裁判決に次いで2件目。最大規模の今回の訴訟で国の責任をどう判断するかが注目されていた。
判決は、政府機関が2002年にまとめた長期評価によって国が巨大津波の可能性を予見できたと判断。「非常用電源の高所配置などの対策を東電に命じれば事故は防げた」と述べた。
国は「津波は予見できず、東電に津波対策を命じる権限もなかった」と主張したが、判決は規制権限を行使しなかった国の対応を「著しく合理性を欠く」と結論づけた。
原告側によると、福島地裁に訴えを起こしたのは福島県内59市町村と隣県の宮城、茨城、栃木の住民。国の指針に基づく東電の賠償額は低すぎるとして、生まれ育った故郷を失ったことへの慰謝料などを求めた。住んでいる地域の放射線量を事故前の水準に戻す「原状回復」も請求したが、退けられた。
同種訴訟で初の判決となった3月の前橋地裁は「巨大津波を予見できたのに東電に対策を命じなかった」と国の過失を認め、東電とともに賠償を命じた。一方、9月の千葉地裁判決は「国が東電に対策を取らせても事故を防げなかった可能性がある」と国の賠償責任を否定した。