2017年12月18日(月)

ノーベル化学賞、極低温電子顕微鏡、生体分子の立体構造解析

科学&新技術
2017/10/7 19:00
保存
共有
印刷
その他

 化学賞は生物の体内にあるたんぱく質などの立体構造を詳しく調べる「極低温(クライオ)電子顕微鏡」を開発した英国、スイス、米国の3人の研究者が受賞する。ウイルスなどのたんぱく質の構造を原子レベルで把握できるようになった。選考委員は「生化学を新しい時代に導いた」と高く評価した。

大阪大学蛋白質研究所に設置された「極低温(クライオ)電子顕微鏡」

 生物の体内では様々なたんぱく質が作られ、生命活動を担う。その詳しい構造がわかれば、どんな分子と結合し、どんな動き方をするのかを探る手がかりとなる。体内で起きる様々な反応を解明したり、治療薬を開発したりするのに役立つ。

 従来のX線を使う解析法だと、たんぱく質の結晶を作らなければならないため、大量の試料が必要で手間がかかった。結晶を作れないたんぱく質も多く、構造を調べられる種類も限られていた。こうした状況を大きく変えたのが受賞する3氏の成果だ。

 材料の解析に使う電子顕微鏡を使えないかと考えたのが、英MRC分子生物学研究所のリチャード・ヘンダーソン・プログラムリーダーだ。電子顕微鏡で使う電子ビームは光の波長よりも短いため、たんぱく質の細かい分子構造がわかる。ただ電子ビームはエネルギーが強く、たんぱく質に当てると壊れてしまう。測定中は真空にする必要があり、水分が蒸発して形が変わってしまう課題もあった。

 そこで、ヘンダーソン氏は糖の一種のグルコース溶液で保護しながら、通常よりも弱い電子ビームで観察した。最初はぼんやりとした画像だったが、改良を重ねて1990年に原子レベルで調べられるようになった。

 スイス・ローザンヌ大学のジャック・デュボシェ名誉教授は液体窒素などを使って試料を急速に凍らせる方法を考案した。真空中でも水分の蒸発を防ぎ、電子線を当ててもたんぱく質を壊さずに解析できるようになった。米コロンビア大学のヨアヒム・フランク教授は、様々な方向から撮影した画像をコンピューターで重ね合わせることなどで、高解像度の立体画像を作る手法を開発した。

 大阪大学蛋白(たんぱく)質研究所の高木淳一教授は「ノーベル賞をとってもおかしくない研究者は十数人いた。受賞する3人はこの分野を切り開いたパイオニアだ」と説明する。

 クライオ電子顕微鏡を使うことで、抗生物質の耐性を引き起こすたんぱく質やジカ熱の原因ウイルスの表面構造など、ここ数年で様々な分子構造が明らかになった。生命科学の基本的な理解だけでなく、医薬品開発にも役立っている。高木教授は「ここ2~3年で、さらに解像度が高まり、利用できる分野が一気に広がった」と話す。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報