「売りたいのは充電網」 電動二輪の雄、台湾・ゴゴロ
電動二輪の旗手として存在感を増している台湾のベンチャー、Gogoro(ゴゴロ)が日本に進出する。住友商事から出資を受け沖縄県石垣市でレンタルサービスを2017年度中に始める予定だ。成熟しつつある日本の二輪市場でどのような戦略をとるのか。最高経営責任者(CEO)のホレイス・ルーク氏に話を聞いた。

「ゴゴロはテスラと比べられることが多いがビジネスは正反対だ。テスラは車を売るためにインフラや急速充電器を準備した。我々は反対に充電などのネットワークを売るため二輪車を作ってきた」
ゴゴロ最大の特徴は「ゴーステーション」と呼ぶ充電施設。台湾では台北など都市部で443のステーションを設けており、スマートフォン(スマホ)を使って自分のいる場所からほぼ1キロの範囲内でステーションを見つけられるという。
ステーションは無人。残量の減った電池をスロットに差し込んで初めて、充電済みの電池を受け取ることができる仕組みだ。作業は6秒程度。手軽さから3年足らずで累計3万4千台超を販売した。車両販売の先に見据えるのが、他の電動車も使える充電ネットワークの展開だ。
「テレマティクスとシステムの分野でメーカーと話し合いを進めている。ゴゴロは二輪を電動化したのではなく、スマートフォン(スマホ)に車輪をつけたという方が正しい。車輪の数を問わずメーカーが作る電動車のオペレーションに協力し、飛躍の土台としたい」
ホンダやヤマハ発動機といった世界的な二輪大手の本拠地でもある日本市場。ルークCEOはすでにメーカーとの提携について動き始めていると話す。電動車そのものより、電動化に必要な充電インフラとそのオペレーションを売る考えだ。
「交換式バッテリーは単純に見えるが、充電のタイミングや回数、ステーションの位置を人工知能(AI)などで最適化している。顧客が増えるほどシステムの価値は高まるし、集まる情報も増える。ゴゴロとしての成長エンジンはこのネットワークだ」

台湾で発売した「ゴゴロ2」の販売価格は約7万台湾ドル(約26万円)。現地の補助金で約4万台湾ドル(約15万円)になる。利用状況に応じ2千~4千円のプランを選ぶ購読料型と呼ばれるモデルを取っている。ステーションの設置には膨大な初期投資が必要で、回収には、インフラに参加する利用者の数が鍵となる。
「日本の消費者の感度は高く、四輪、二輪を問わず技術のレベルは高い。まずは石垣島のパイロットで、メーカーから消費者まで興味関心を高めなければならない。台湾では交換した電池の99.85%が問題なく稼働している。今後もサービスの形式や質についてもより高めていく」
ゴゴロは独部品大手のボッシュと組み16年にはベルリンに、17年にはパリに進出し数百台規模のシェアリング事業を展開している。スマホで予約し自由な場所で乗り捨て、充電が必要な車両を管理者が回収するモデルだ。地域によってビジネスは変わる。日本でもホンダやヤマハ発などの大手メーカーが電動二輪の実証実験を進めており、普及に向けた模索が始まった。
(企業報道部 江口良輔)
[日経産業新聞 2017年10月6日付]