日産、無資格検査なぜ起きた? メーカー任せに盲点
資格を持たない従業員によるずさんな検査が日産自動車の国内全ての完成車工場で発覚した。品質に厳しいとされる日本のものづくりの現場で、なぜ不適切な検査体制が見過ごされてきたのか。ポイントを整理した。
Q 不備が見つかったのはどんな検査工程だったのか。
A 大量に生産する車を効率良く消費者に届けるために、本来は国の機関で1台ずつ実施するブレーキなどの安全性の検査を車メーカーが代行することが認められている。日産のずさんな検査はこの工程で見つかった。
法令に基づく通達では、社内の認定を受けた従業員だけが検査できることになっている。日産では認定を受けていない従業員が検査に携わっていた。ルール通りに検査することを前提にメーカーに検査を任せていたことで、結果的にチェックが甘くなった。石井啓一国土交通相は「制度の根幹を揺るがす行為だ」とのコメントを出した。
Q 不正はなぜ見過ごされた。
国土交通省の立ち入り調査では、日産の各工場で有資格者の名前の判子を資格のない従業員に貸し出していたことが判明している。無資格者が単独で検査した場合でも有資格者が検査したように書類が偽装されたため、内部監査などでは発覚しなかった可能性がある。
Q 不正は組織的だったのか。
無資格者による検査が行われるようになった時期や、全工場で書類の偽装が常態化していた理由について日産は「調査中」としている。
10月2日に記者会見した西川広人社長は「工程そのものの意味が(従業員らに)十分に認識されていなかったところが大きい」と述べ、法令順守の意識の低さが原因との見方を示している。
Q 日産車の保有者はどうなる。
A 日産はまだ1回目の車検を受けていない車両を対象に、検査をやり直すためのリコール(回収・無償修理)を週内に国交省に届け出る方針だ。
リコール対象となるのは14年10月から17年9月までに生産した24車種121万台で、軽自動車を除く日産の国内販売の3年分に相当する。該当する車両の保有者が車両を最寄りの販売店に持ち込めば検査のやり直しを受けられる。
Q 今後の展開は。
外部の弁護士ら第三者を含む調査チームが10月末をメドに事実関係と再発防止策をまとめた報告書を国交省に提出することになっている。
16年4月に発覚した軽自動車の燃費不正問題で、三菱自動車は必要な審査を受け直すために、該当車種の生産を2カ月半にわたって停止する事態に追い込まれた。
国交省は日産に対し業務改善を指示しており、同社からの報告の内容次第では新たな措置を講じる可能性があるとしている。