2019年7月22日(月)

東レ、電池部材首位を猛追
車載向け、世界で大増産

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2017/10/4 6:30
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リチウムイオン電池の主要部材であるセパレーター(絶縁材)。世界首位の旭化成はリチウムイオン電池の「生みの親」と呼ばれノーベル化学賞候補とされる吉野彰名誉フェローを抱え、世界をリードしてきた。ただ、旭化成から首位を奪うべく猛然と動いているのが東レだ。顧客ごとのきめ細かいニーズに対応して、日米韓欧の自動車メーカーを次々と囲い込みつつある。

安全性や高容量化など顧客の要請に応じてセパレーターを作り込む(東レの村松部門長)

安全性や高容量化など顧客の要請に応じてセパレーターを作り込む(東レの村松部門長)

韓国中南部の亀尾(グミ)市。東レは2016年にセパレーター工場の生産能力を2倍にしたばかりだが、息つく間もなく大型増産を決定。17年度末にさらに8割増強した新ラインが稼働を始めることになる。

この増設を含めて東レが初めて明らかにしたセパレーターの年産能力は6億5千万平方メートル。来年には世界首位の旭化成をしのぐ規模となり、電気自動車(EV)など向けに需要が急増する自動車市場で戦線を広げて旭化成に真っ向勝負を挑む。

東レは攻勢の手を緩めない。20年ごろまでに世界中で1200億~1300億円を追加投資して生産能力を3倍に引き上げる方針を7月に表明している。競合他社は「そんなに増やせるとはとても思えない」と冷ややかに見ているが、日覚昭広社長は「EVにかじを切る欧州などで地産地消にしっかり対応していく」と本気だ。

主要顧客の韓LG化学がポーランドに、韓サムスンSDIがハンガリーに今年、電池工場を新設したのを見逃さず、東欧に拠点を設ける準備に大忙しだ。

電極のイオンが行き来するセパレーターは電池の発火を防ぐことから安全面では最重要の部材となる。村松弘一BSF事業部門長は「安全性など顧客の品質要求は極めて高いうえ寿命の長さなど高機能化にも高度な技術が欠かせない」と説明する。

電池が約130度になるとセパレーターは溶けてイオンが行き来する微細な穴を閉じる。同時に発火しないよう溶けた形状を保つ耐熱性能も備わっている。東レ製の耐熱温度は170度と他社製より20度ほど高いのが特徴だ。

その秘密はまん中のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上下を特殊な耐熱フィルムで挟んだ3層構造にある。しかも、3層を貼り合わせずフィルムを押し出す機械から一体積層することでPETフィルムが溶融しないように鉄壁の防御システムになっている。

もう一つ他社に優れた特徴がある。電子顕微鏡でのぞくと、フィルムは面ではなく無数の繊維が絡み合ったような「多孔質」になっている。そして、最小20ナノ(ナノは10億分の1)メートルの微細な穴の径はすべて均一だ。穴が均一でないと、イオンのセパレーター面積当たりの移動もバラバラになり電極構造が崩れやすい。その結果、容量の劣化を起こすだけでなく安全性が低下することも証明されている。

東レの真骨頂はこの穴の径の大きさを顧客の要求に応じて制御できるところにある。

例えば、20ナノメートルだと「デンドライト」と呼ぶ電気ショートの原因となる結晶物質の成長を防ぎやすい。他方、40ナノメートルだとその性能は落ちるが、電解液を注入しやすく目詰まりも起きにくいため繰り返し使いやすい。

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