先に着く列車はこちら JR東、案内きめ細かく
JR東日本は新たな機能を加えた列車のダイヤ案内サービスを広げる。ダイヤが乱れた列車の到着時刻や、先着が可能な路線などを算出し、駅ホームなどでリアルタイムで案内する。現在も山手線など一部で採用しているが、関東の主要路線で導入を増やす計画だ。相互乗り入れの拡大などで運行経路が複雑になるなか、利用者の利便性を高める。

「ATOS」(アトス)と呼ぶ独自システムの更新を進める。ATOSは中央の運輸指令所が列車の運行状況を路線ごとにリアルタイムで把握できるシステム。駅ホームの案内表示器で通常ダイヤに加えて遅延情報や他路線の運行状況も効率良く伝えられる。今春時点で山手線や東海道線など計24路線で導入済みだ。
指令所は全ての列車の運行状況を刻一刻と把握できる。このため、人身事故が起きても路線の全区間で運転を見合わさず、事故の影響がない区間については折り返し運転をするダイヤを組めるようにもなった。
一方、2015年開業の「上野東京ライン」のように、複数の路線を走る電車も増えるなど乗客の利用パターンが多様化。そこで、JR東は従来のATOSが更新時期に差し掛かったこともあり、新機能を順次追加している。
その1つが「先着案内システム」だ。路線ごとに独立していたサーバーを一元管理することなどにより、複数路線の中から目的駅に先着する路線を乗客に示せるようにした。

例えば、大宮駅(さいたま市)から横浜駅まで行きたい場合、湘南新宿ラインと上野東京ラインのどちらが先着するのかを大宮駅のホームの表示器に示す。今春までに大宮、浦和、赤羽、横浜の各駅で表示を開始。今後も設置駅を広げていくことを検討している。
さらに、「予測ダイヤ」機能の導入も増やす。同機能は人身事故などで後続列車にも遅れが発生する場合、遅延状況を加味したうえで当該列車が駅に到着する時間などを予測。駅構内で案内することも可能だ。
現在は山手線や中央線、京浜東北・根岸線など7路線に導入している。今年度は横須賀・総武快速線、来年度には東海道線にも導入していく計画だ。
JR東は利用者の利便性向上を目指し、列車の多様な運行ルートを策定している。羽田空港と都心を3つのルートでつなぐ新しい路線「羽田空港アクセス線」の敷設も計画されており、ATOSの役割はさらに高まりそうだ。
(企業報道部 岩本圭剛)
[日経産業新聞 2017年10月4日付]