2019年4月24日(水)

ヤマハの翻訳アプリ 電子ピアノの技

2017/10/3 6:30
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日本語アナウンスを外国語の文字に訳すヤマハのアプリ「おもてなしガイド」が引っ張りだこだ。JR東海や全日本空輸など約40社が、訪日客へのサービス向上のための実験で採用した。ヤマハは騒音に強い仕様など特許を100件出し、日本語アナウンスの読み取りに電子ピアノのデジタル技術を活用している。

鉄道の駅でも日本語アナウンスを自動で13カ国語に翻訳し、スマホの画面に文字で示す

鉄道の駅でも日本語アナウンスを自動で13カ国語に翻訳し、スマホの画面に文字で示す

おもてなしガイドのアプリは定型のアナウンスをあらかじめ外国語に訳し、日本語アナウンスを流すとほぼ同時にスマートフォン(スマホ)に表示させる。企業との実験を通じ、扱う言語は中国語、韓国語、フランス語など13に広がった。

国内外で取得済みと申請中の特許も増えていった。特にスピーカーから出る日本語の音声に外国語の文字信号を乗せ、スマホで受け取る手法が特徴だ。スマホが日本語を聞き取っているわけではなく、最初から文字用の情報を送っている。

新規事業開発部の瀬戸優樹チーフプロデューサーは、他の翻訳技術と違い「騒音に強い」と説明する。

音で通信するため、インターネットに接続していない場所でも文字情報を受け取れる。ヤマハは誰もがアナウンスの内容を理解することができる「音のユニバーサルデザイン化支援システム」と呼んでいる。

難しかったのは最初のころの技術開発だった。

ヤマハの手法は、スピーカーなど放送用機器に組み込む専用ソフトウエアが、いま流れている日本語アナウンスが文章のデータベースのどれにあたるか判断している。

アナウンスが「ここは……」と始まれば、データベースの中からこの言葉で始まる文章だけまず選ばれる。さらに「京都の……」と続けば、京都関連の文章に絞り込む。こうした仕組みによって、アナウンスが少し進んだところでどの文章なのか正確に認識する。あとは、日本語の文章に対応する外国語の文字信号をスマホに送るだけだ。

つまり翻訳アプリといっても、日本語の分析が最も大切だったというわけだ。正解の文章を一つ選ぶうえでは言葉の並びだけでなく、声のトーンも参考にしている。

電子ピアノのデジタル技術がベースになった。ド、レ、ミなど一つ一つの電子音を演奏していくとき、その音符のつながりを読み取りながら、数万種類の楽譜データベースのどれに該当するかすぐ見つけられる技術がある。電子楽譜の自動譜めくりができるスマホの楽譜アプリとの連携に使われている。

JR東海は8月、おもてなしガイドを使い、東海道新幹線の車内アナウンスをスマホに流す実験を始めた。英語やタイ語、スペイン語など8言語で左右どちらのドアが開くかや、車掌による乗り換え案内の情報を示す。アナウンスは自動放送や車掌の肉声だ。

こうしたアプリの実験は2015年に始まり、訪日観光のゴールデンルートと言われる東京、大阪、京都で実施した。全日空の関西国際空港の国際線搭乗ゲート、都営地下鉄浅草駅構内など交通の要所が中心。JR西日本京浜急行電鉄、阪神電気鉄道、京阪バスなどもある。

高島屋やイオンの店舗、サンリオピューロランドや漫画の世界観で遊べるナムコのテーマパークなど、場所の数でみると60カ所になる。

おもてなしガイドで磨いた技術の用途は広がりそうで、年内に無線による自治体の防災放送でも使う計画だ。地震やゲリラ豪雨の際の緊急放送を訳す。外国人に加え耳の不自由な人向けの文字表示サービスも始める。

アプリは18年4月に正式版として提供する予定。消費者によるアプリのダウンロードは無料だ。ヤマハは企業がほしい機能をアプリに組み込むときに収入を得る。例えば、翻訳と一緒にクーポンを出したり、避難を指示するときに避難場所まで示したりする機能をイメージしている。

翻訳サービスが充実していけば、訪日客が様々な場所をまわりやすくなり、国内消費を盛り上げる一助になる。観光庁によると、今年4~6月に日本を訪れた観光客数は前年同期に比べ21%増の722万人で、消費額は過去最高の1兆776億円となった。

20年の東京五輪・パラリンピックをみすえて同年までに首都圏や関西を中心に4000カ所での導入を目指しており、瀬戸氏は様々な場面で使える翻訳技術をつくるのが目標だと話している。

(大阪経済部 土橋美沙)

[日経産業新聞10月3日付]

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