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野生、造形のリアル 神戸どうぶつ王国(もっと関西)
ここに技あり

コラム(地域)
関西
2017/10/2 17:00
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 神戸市にある動植物のテーマパーク「神戸どうぶつ王国」。昨年開業したレッサーパンダを展示する「アジアの森」に足を踏み入れると、来場者の通路の頭上までせり出した木の枝や滝の流れる崖が目を引く。訪れた人を自然の中にいる感覚へといざなうこの木々や岩、土の一部は、実は人工の造形物。アトリエ・ティーエムバーガー(大阪府貝塚市)の「作品」だ。

レッサーパンダがお気に入りの場所は擬木の上。幹の根元も擬土だ

レッサーパンダがお気に入りの場所は擬木の上。幹の根元も擬土だ

 最近の動物園は、コンクリートの壁とオリだけの無機質な造りから脱し、動物の活力を高めるために野生の生息環境に近づけた園舎づくりを進める。ただ、成長し、腐食もする天然の木や岩、土だけで野生の環境を再現すると、後々の維持管理が難しい。だから、人工的に自然環境を演出できる同社の技術が全国の動物園から重宝されている。

 擬木も擬岩も鉄筋で形を作った後、モルタルや塗料を塗り重ねて仕上げていく。強度が必要な擬木の先端にはガラス繊維強化セメント(GRC)を使用。アフリカ・サバンナの花こう岩や北米の針葉樹など世界各地のあらゆる岩や木の造形が可能だという。サバンナなどニーズの多い地域は実際に現地を視察し、リアリティーを追求してきた。

 アジアの森の擬木に施した樹皮のめくれに、芸術作品としてのこだわりがのぞく。レッサーパンダの安全や健康を守る様々な工夫も凝縮。木登りが好きなレッサーパンダが擬木から転落するのを防ぐため、爪をひっかける滑り止めの“木目”を横に入れた。足裏を傷つけないよう、池のほとりに配した擬土の表面はなめらかに仕上げた。動物の健康を害さない塗料の使用は基本中の基本だという。こうした細かな配慮が、活発に木登りをするレッサーパンダ本来の習性を引き出している。

 井端隆志社長は「(動物園舎のプロデュースは)動物に関する知識と芸術性の両立が求められる」と話す。同社の職人は現在、約20人。芸大や獣医学部の出身者ら多彩な人材をそろえ、全国の動物園から信頼を集める。過去には大阪・天王寺動物園のサバンナゾーンや東京・上野動物園のゾウ舎など日本を代表する動物園の園舎を手掛けてきた。

 擬岩や擬土はオリに代わる機能も担う。アジアの森の場合、奥に設けた擬岩の壁は地面に近い部分をくぼませ、よじのぼって脱走できないようにした。来園者と動物を擬土と池で仕切り、両者の距離を近づけた。神戸どうぶつ王国の佐藤哲也社長は「野生の生息環境を再現した園舎は動物のストレスを軽減し、来場者にとっても心地いい景色となる」と説く。施設の魅力づくりを陰で支える擬木や擬岩にも注目すると、動物園の楽しみ方がぐっと広がる。

 文 大阪地方部  田村城

 写真 松浦弘昌

 〈カメラマンひとこと〉 擬木や擬岩、擬土は木や岩にそっくりで、実物とほとんど区別がつかない。だがよく見ると木の幹と池の縁、後ろの岩がつながっている。自然にはない様子を構図に収めつつ、人気者のレッサーパンダがこちらを向いた瞬間にシャッターを切った。

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