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TOTO、高級トイレ、もはや家電、世界を意識

TOTOは8月、温水洗浄機能付き高級トイレ「ネオレスト」シリーズの新型を発売した。中でも、デザイン性を一段と高め、浴室と一体化した欧米風のレイアウトにもなじみやすい「NX」は価格(税抜き)を57万円に設定。日本だけでなく世界的にTOTOの旗艦モデルとして売り出す。節水性、掃除のしやすさなどの機能面では一定の水準に達した感のある高級トイレについて、有識者で構成する「新製品評価委員会」(委員長・片岡寛一橋大名誉教授)で将来性などを議論した。

商品力評価の対象とした「ネオレストNX」は新機能として、おしりの洗い心地を改善した「エアインワンダーウェーブ洗浄」と便器の洗浄性を向上させた新「トルネード洗浄」を盛り込んだ。

「エアインワンダーウェーブ洗浄」は、流速の違う洗浄水を水玉状にして1秒間に100個を連射していた方式を踏襲しながら、水玉に空気を含ませることで一粒の大きさを約30%拡大して、当たり心地の量感を向上させた。洗い心地に対する直接の感想よりも「そこまで浴び心地にこだわるきめ細やかさに感心した」(マーケティングプランナー)と、TOTOの開発姿勢を評価する声が目立った。

新「トルネード洗浄」は、吐水口を従来の左奥から右手前に変更することで汚物がつきやすい便器後方に勢いよく水が当たるのが特徴だ。この改良により便器前部分から水があふれ出にくい構造となり、便器のフチの「返し」をなくし、掃除をしやすくした。ITコンサルタントは「陶器という素材にこだわりすぎながらも技術的に他社を一歩リードした感がある」とする。住宅系シンクタンク副所長も「使い勝手や操作性の工夫を積み重ねてきたのがよくわかる」と指摘する。

これらの新機能は下位モデルの「AH」(38万9000円から)などにも標準採用する。価格差の肝は曲線美にこだわった「ノイズ(雑音)レス」デザインにある。海外への視察旅行が頻繁な商品研究所長は「NXを初めて見たときはその大きさに驚いたが、機能以前にその質感とデザイン性にひかれた」と語る。

大学教授(商品経済学)も「すべての方向から見て、美しいデザインと高い機能性を感じさせる。芸術品と言ってもいい」と称賛する。日本ではデザイン性を味わえるトイレ空間を持てる家庭は少ないが、海外の富裕層には響きそうとの見方が多かった。

温水洗浄機能付きの高級トイレはTOTO、LIXIL、パナソニックの3社で市場をほぼ占める。高価格帯では便座と便器の一体型で、水をためる大きなタンクが付かないタンクレスが一般的で、3社で長く、節水性や清掃性を競ってきた。

節水性では便器の洗浄水は4リットル前後まで進んだ。TOTOでも既に2012年に床排水では3.8リットルを達成しており、今回の新製品でも同じ数値にとどまる。

清掃性の高さを象徴する機能である「きれい除菌水」。水に含まれる塩化物イオンを電気分解してできた次亜塩素酸を含む水のことで、便器やノズル洗浄に使うが、この機能を使い始めたのは11年。住宅系シンクタンク副所長は全般に「画期的技術は出尽くしてきた感がある」と見渡す。

温水洗浄機能付きトイレは、今後市場にどう受け入れられていくのか。勤務する大学のトイレはすべて温水洗浄式という大学教授は「小さいころから使っている学生は、構内でも少しでも使い心地の良いトイレを探す」というほどの浸透ぶりだ。家庭用としては、もはや洗浄機能のないトイレと商品性を比較する段階にはないとする。

便器はそのままに、便座のみ温水洗浄機能付きのものを導入する例も多く「普及しているとはいえ、タンクの付いた低中級機が中心。今後、リフォームなどが増えれば高級機へのシフトは進む」(商品研究所長)と高級機の今後の市場拡大を楽観視する向きも多い。

男性でも家庭では座って小用を足す人が増え、「トイレ用のスリッパを置く家庭も少なくなった」(住宅系シンクタンク副所長)。こうした住生活の変化は、高級トイレがけん引したとの見方もあった。

温水洗浄機能付き高級トイレ全般に、高機能化して複雑な機構を持ち「もはや家電化してきて、故障した際には不安が残る」(マーケットプランナー)との声もある。片岡委員長は「トイレが高級になるにつれ、トイレ空間のあり方も変わってきた」と総括。海外市場で広がりを見せるためには「メンテナンス面でのわかりやすさが必要」としながら「できるだけ体験する機会を増やすべきだ」と結んだ。

「エアインワンダーウェーブ洗浄」は空気の混入率により水玉の大きさ、重さが変わるため、さまざまな混入率で試し最適な量感を追求した。特に噴射強度が高い際の量感改善が狙いという。研究員も中程度の強度を中心に新旧の洗浄方式を試した。確かに新方式の上質感が勝ったが、その違いは微妙。評価委員の中でも差がわからないとの声もあった。

既に洗い心地では一定の評価があるのに、わずかな違いを追求してノズルを改良、特許出願する労力をかける。「ウォシュレット」の名称で温水洗浄便座普及の先陣を担ったメーカーとしての底力を感じた。

(企業報道部 広光貢一)

[日経産業新聞 2017年10月2日付]

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