ダメ靴を履いていない?「いい歩き」は「いい靴」から
靴選び 5つの「NGあるある」

崩れた足のアーチを改善するためには、毎日の歩きを支える「靴」の役割が重要。しかし、むしろ足の崩れを加速させる「"ダメ靴"を履いている人があまりにも多い」と、足の健康と靴の関係に詳しい吉田龍介さんは言う。「履きやすい靴」が「いい靴」ではない。
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幅が広い、軽くて軟らか、クッション性がある……などを靴選びで重視している人は要注意。「一見足に優しそうな靴が、足の骨格を崩す原因になることは多いです」(吉田龍介さん)
特に要注意なのが、幅の広い靴。指の付け根が靴に触れるのを嫌い、実際の足幅より広い靴を履くと「足が前方に滑り、爪先が当たって痛みを感じやすい」。さらに怖いのは、幅広の靴を履き続けると足の骨格が潰れて、地面からの衝撃を吸収するアーチを崩してしまうこと。そうなれば外反母趾(ぼし)や膝痛、腰痛、肩凝りなど、全身のトラブルを招きかねない。
「靴の幅は足幅に合ったものが理想。最初は締めつけ感があっても、アーチの潰れを防げ、また靴の中で足が泳がないため、歩きやすくなる。そもそも多くの人は、自分の正しい足のサイズを把握していないので、専門店で一度計測してもらってください」
他にも、歩行を正しくサポートするためには、かかとの周囲の適度な硬さや、靴裏の屈曲する位置などが重要になる。ただし、これら「いい靴」の条件をすべて満たす靴は実際には少ないと、吉田さん。「いい靴」と「ダメな靴」との違いを理解し、ダメ要素が極力少ない靴を賢く選ぶようにしたい。
NGあるある(1)自分の足の正しいサイズを知らない
→サイズ(足長)とワイズ(足囲)を実測しよう
「自分の足の実寸」は意外に把握していないもの。まずは靴店などでサイズ(足長)とワイズ(足囲)を計測しよう。サイズの実寸に0.5~1cmの「捨て寸」を足した数値が、選ぶべき靴のサイズ。「捨て寸が必要なのは、着地時にアーチが伸びるのに伴い、指先も前方に伸びるため。捨て寸が適正なら、指が靴に当たって圧迫されることもない」(吉田さん)。サイズとワイズは家庭用メジャーでも計測が可能。


NGあるある(2)幅は広いほど足にいい
→幅が広過ぎる靴はアーチを崩す原因に
「ゆったりしていると楽そう」と、幅広の靴を選びがちだが、「自分のワイズよりゆったりし過ぎる靴を履き続けると足が広がり、アーチが崩れる恐れも」。ワイズがきちんと合った幅の靴を選べば、アーチがさらに潰れるのを防げる。また、靴の中で足が泳いでしまう状態が是正され、歩行も楽になる。「日本人の足は幅広」とよくいわれるが、それは下駄履きが日常だった昔のこと。現代は細めの人も多い。

NGあるある(3)クッション性が何より重要
→クッション性が強過ぎると捻挫につながることも
着地の衝撃を和らげる一方で、「アーチが崩れているなど足の癖の強い人がクッションの強い靴を履くと癖が助長され、捻挫(ねんざ)の危険も」。本来は、かかとの骨の下にある脂肪体で着地の衝撃を吸収するが、加齢で脂肪体が潰れて分散すると、着地の衝撃を受けやすくなる。「その場合、靴のクッションより、かかとをホールドする形状のインソールが効果的。脂肪体が寄せ集められ、衝撃を緩和できる」
NGあるある(4)軽く、軟らかい靴ほど歩きやすい
→軽量化のために足のサポート機能が省かれている場合も
軽く軟らかい靴は、足のサポート機能が不十分なものも。簡略化されがちなサポート機能が、「ヒールカウンター」というかかと周りの頑丈な芯。「かかとが横ズレしにくくなり、足が内側や外側に過度に傾くのを防ぐ。軽く軟らかい靴はこの芯が不十分なことが多い」。靴底は、しならせたときに、指の付け根部分が適度に曲がるものが良い。底全面が曲がる靴ではスムーズに蹴り出せない上、足裏全体に負担がかかり疲れやすい。


NGあるある(5)ローファーやスリッポンが好き
→ひもで締めることで、アーチが正しくサポートされ、疲れにくくなる
ローファーやスリッポンは本来、椅子にかけて執務する貴族用の室内履き。土踏まずや甲をホールドする構造ではなく、足が前に滑りがち。歩きやすいのはひもでしっかり締められる靴。甲の押さえ部分をひもで締めることで、靴が土踏まずや甲周りにフィットし、かかとがヒールカウンターに固定される。すると靴と足との一体感がアップし、アーチが正しくサポートされて足が疲れにくくなる。

インソールでより健康な足に
いい靴を履くことに加え、靴底に敷くインソールの併用も足の健康アップに効果大。アーチの崩れを補整し、かかとを安定させて傾きを防ぐ他、着地の衝撃を分散し、足や全身への負担を軽減する。市販品は試し履きして、インソールのアーチと自分の足のアーチとが合うか確認を。より高いフィット感を望むならオーダーメイドしても。
足と靴の健康塾「足本舗」代表。スキーブーツのフィッティング調整を行うなかで、早くから足裏のアーチの崩れに着目。「アーチのゆがみを正せば元気に歩ける」をモットーに、靴やインソールの選び方、歩き方をシューフィッターや一般客などに指導。千葉県の店舗では一人ひとりに合わせたオーダーインソールも成型する。
(文 籏智優子、写真 佐藤正純、PIXTA)
[日経おとなのOFF 2017年10月号記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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