2017年12月14日(木)

問題含みの中国の産業政策 産官一体推進は両刃の剣

The Economist
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2017/9/26 17:38
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The Economist

 中国の北京―上海間の高速鉄道は21日から、最高時速350キロでの営業を再開し、長距離高速鉄道としては世界最速の記録を作った(編集注、2011年に浙江省温州で40人が死亡する事故発生を受け、上限時速を300キロに落としていた)。

 この偉業は、工学の勝利であると同時に産業政策の勝利でもあった。中国が高速鉄道の運転を始めたのはわずか10年前だが、今や国内の高速鉄道網の総延長距離は2万キロに達し、中国を除く世界の合計を上回る。中国は強い政府がなければ、こんな鉄道網を築けなかった。研究資金から鉄道用地の確保、赤字路線への支援、車両メーカーなどへの補助金、そして、大いに物議をかもした外国企業に商業機密の共有を促す奨励策まで、すべてを国が提供してきた。

最高時速350キロで営業を再開した高速鉄道は中国の産業政策の勝利=新華社・AP

最高時速350キロで営業を再開した高速鉄道は中国の産業政策の勝利=新華社・AP

 高速鉄道は、中国政府が優先すべき産業を特定し、そうした産業を育成すべく資金と支援策を出すことで産業として成功させた典型例だ。これは中国がなし遂げられることへの畏怖を呼び覚ますとともに、これほど手ごわい競争相手だと他国は勝ち目がないのでは、との不安を引き起こす。

■ロボット工学やAIまでも支配か

 しかし、失敗もあった。強い自動車メーカーや半導体メーカーを育成できなかったのは顕著な例だ。中国は今、幅広い先端産業の育成を目標とする新しい産業政策を打ち出しており、ロボット工学から人工知能(AI)まで中国がすべてを支配するのではないかとの懸念を招いている。だが、そんな結果になるかどうかは全く未知数だ。

 産業政策は微妙なテーマだ。欧州大陸と特にアジアの企業では、政府支援があったからこそ自国の産業として育成できたとみる向きが強いが、英米では政府による介入にはむしろ疑念の方が強い。急激に変化している市場で、政府がさしたる実績を上げたことはなかったからだ。それでも大半の国は、インフラや優遇税制、研究助成金の提供などを組み合わせて一部の産業を支援しようとする。各国間で異なるのは、政府がそうした施策のどこに重点を置くかだ。

 中国は、その産業政策の幅の広さと影響力で突出している。造船、製鉄、石油化学など九大産業の近代化に長年専念してきたが、10年に代替エネルギーやバイオテクノロジーなど7つを新たな戦略産業として目標に加えた。そして2年前、政府は航空宇宙や新素材、農業機械など10産業の育成を明記した産業振興構想「中国製造2025」を発表、今はこれが国の計画の中核をなしている。

 様々な計画が重複しており、例えば自動車産業はどの計画にも出てくる。結果、産業の新旧にかかわらず、経済の重要な部分を担う産業については、政府は幅広い政策を展開する。

■重点産業に助成金90兆円

 「中国製造」はドイツの「インダストリー4.0」を一部参考にしている。独モデルは、職業訓練と政策支援で産業振興に役立つ環境の創出に集中し、経営判断は企業に任せる仕組みだ。だが中国の支援策は徹底している。今年初めまでに総額5兆3000億元(約90兆円)に上る1013もの「国家助成金」を立ち上げ、大部分を「中国製造」産業に投入する。工業情報化省は8月、62の対策に分配される製造業助成金計画を発表した。だが、問題だとして最も論争を招いたのは、政府が様々な中国の製造業について現地調達率の目標を定めたことだ。ある計画では、国内外双方で数百もの市場シェア目標が示された。在中欧州連合(EU)商工会議所は今年の報告書で、「明らかに、これはただの国内政策ではない」と警鐘を鳴らしている。

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