勝利のメンタリティー(山本昌邦)

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サッカー日本、W杯でカギ握る「捨てる勇気」

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2017/9/27 6:30
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サッカー日本代表が6大会連続のワールドカップ(W杯)出場を決めてくれた。来年6月にロシアで開かれる本大会の出場権を、もし逃すようなことがあったら、日本の"サッカー景気"に大きなダメージを与えていたはず。オーストラリアという難敵を前に「ここまで来たら、四の五の言わずにやるしかない」と奮い立った日本の選手たちの底力、地力にあらためて敬意を表したいと思う。

本大会出場を決めた8月31日のオーストラリアとのアジア最終予選は、舞台となった埼玉スタジアムの雰囲気が最高だった。41分に浅野(シュツットガルト)の先制点が決まる3分前に日本は「あわや」というピンチを迎えた。ヘルタ・ベルリンで原口の僚友であるレッキーのシュートが日本のDFに当たってコースが変わり、GK川島(メス)の手の届かないところに転がったのだ。シュートはポストにはじかれ、事なきを得たが、あれが決まっていたらオーストラリアは相当勢いづいたことだろう。

テレビの解説を担当しながら放送席の私が感じたのは、そのピンチの後で日本のゴール裏サポーターから放たれた、うなりをあげる「気」のようなものだった。選手一人ひとりの心に突き刺さるようなエネルギーというか。井手口(G大阪)から長友(インテルミラノ)にボールが渡り、長友のクロスを浅野が左足のボレーで決めた先制点は、窮地をしのいだ後のサポーターのゴールを願う気持ちに背中を押されて生まれたように感じた。

もちろん、サポーターの願いだけでゴールが生まれるわけはない。あの浅野のシュートは相当な練習量の裏打ちがあってのことだろう。浅野から見て、長友のクロスはカーブ回転で飛んできたけれど、えてして日本の選手は足を振って合わせ損ない、すかしたようなボレーになりがち。実は見た目以上に難しいシュートだったのだが、浅野は無駄な力を抜いて見事にゴールの隅に送り届けた。

独にはシュート力養う設備

あのシュートを見て思ったのは、ドイツ・ブンデスリーガのクラブにはシュート力を養う設備があること。野球のバッティングマシンみたいな機器が選手を囲むように東西南北に据えられ、そのどれかからボールが飛んでくる。と同時に「ここにシュートを入れろ」というランプが点灯する。選手はマシンから放たれたボールをシュートが打ちやすい場所に止めて、ランプがともった壁面の小さなゴールに蹴り返さなければならない。

オーストラリア戦で先制ゴールを決める浅野=共同

オーストラリア戦で先制ゴールを決める浅野=共同

マシンから放たれるスピードは自在に調節ができるから、ボールスピードを上げれば難易度もどんどん上がる。ボールを止めてからシュートを打つまでの動作は映像に記録され、時間も計測されるから、瞬時の判断とワンタッチコントロールからのシュートをうまくコーディネートできない選手は一目瞭然。個々の選手の中での成長の度合いもシュートに至るまでの時間の短縮具合で簡単にわかるわけだ。

浅野の、あのシュートの背後に、そんな練習があったのかどうかはわからないが、とにかく、あの余裕さえ感じさせたシユートへのアプローチには相当な個人練習の地道な積み重ねがあることだけは確かだろう。

それはさておいて、オーストラリア戦はハリルホジッチ監督が中盤を長谷部(アイントラハト・フランクフルト)、山口(C大阪)、井手口のトリプルボランチで編んだことが、ことのほか効力を発揮した。

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