繊維から事業転換、強いコア技術が成長の鍵 日清紡
CTO30会議(13)

科学&新技術
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2017/10/18 6:30
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日経BPクリーンテック研究所

1907年に設立された日清紡。1960年には繊維が売上の9割を占めたが、現在はエレクトロニクス事業と自動車のブレーキが約7割を占める。ポートフォリオが大きく変わったのは、その時代の市場ニーズに対応してきたからだ。これからさらに成長していくには、新しい価値を生み出していく必要がある。そのための鍵は事業の融合にある。日清紡ホールディングスの木島利裕常務執行役員新規事業開発本部長に、成長を見据えた事業の融合と技術戦略について聞いた。

――繊維から自動車用ブレーキやエレクトロニクスへと事業ポートフォリオを大きく変えたのはなぜですか。

日清紡ホールディングス 常務執行役員の木島利裕氏(撮影:新関雅士)

日清紡ホールディングス 常務執行役員の木島利裕氏(撮影:新関雅士)

木島 戦後の復興と高度経済成長といった時代の流れに対応してきたことで大きくポートフォリオが変わりました。戦時中に取り組んだブレーキや精密機械が、戦後の需要増加で大きく伸びました。戦後取り組んだ製紙事業は、既に譲渡してしまいましたが、これも戦後の需要増加に対応して大きく売り上げを伸ばしました。多角化してきた結果、今のような事業ポートフォリオになりました。

――市場ニーズがあったとはいえ、繊維の会社が自動車のブレーキを生産するのはとても唐突に思えるのですが、なぜ自動車のブレーキだったのでしょうか。

木島 繊維と自動車用のブレーキは、まったく関係がないように見えると思います。でも、要素技術の軸で見ると共通点があったのです。今は使われていませんが、繊維状のアスベストをシートに加工して、ブレーキの摩擦材にしていました。当時は、綿紡績を事業にしている企業にブレーキ製造が好都合だったのでしょう。

戦後に始めた製紙業は、戦時中に空襲を恐れて東京から静岡へ工場を移そうと考えたことがきっかけです。アスベストをシートにするのに抄紙機を使用することから、抄紙機のある製紙工場を買収しました。しかし工場を移転する前に終戦を迎え、東京の工場でそのままブレーキを生産できることになったので、買収した工場ではそのまま製紙業を続けることにしました。紙の原料は綿と同じセルロースで、技術的な共通点が多かったことが幸いしました。

――市場ニーズに対応して多角化したのは分かりましたが、シーズである技術についてはどのように考えてきたのでしょうか。

木島 上(企業上層部)からは常に「マーケットを見ていない。もっとマーケットを見ろ」と言われてきました。持っているコア技術が市場ニーズに合ってないと事業はうまくいきません。コア技術を持つことは大事ですが、それがニーズに合っているのかを常に確認してきました。それが合致すれば、新しい事業が生まれます。そうやって多角化を進めてきたわけですが、マーケットを見ることに気を取られ、最近では技術戦略をおろそかにしてきたのではと反省することが多いです。

――今後の事業の成長はどのように考えていますか。

木島 私たちは今、売り上げを1兆円まで伸ばすという目標を掲げています。現在の売上額がおよそ5000億円ですから、5000億円の上乗せが必要になります。その規模から考えると、自動車産業のような大きな産業で成長しなければなりません。この分野が将来どうなるのか。どのような商品機能が求められるのか。判断できるだけの目利きが必要になるということです。しかし、そのための専門組織は社内になく、新規事業開発本部と経営戦略センターに頼っているのが現状です。

上乗せのうちの半分はM&A(合併・買収)で増やす予定ですが、実践するのは大変です。買収しても、すぐに成果を出すことはできません。ルクセンブルクのブレーキ摩擦材メーカーであるTMD Frictionグループを2011年に買収しましたが、のれんの償却に時間がかかりました。2017年度から利益に貢献できる見通しです。企業にはそれぞれ文化がありますから、その文化を尊重しつつ協力して事業の成果を出し続けることは大変な作業になります。

――M&A以外の残り半分は、どのようにして生み出しますか。

木島 先ずは既存事業の成長です。しかし、各事業セグメント単独では自分たちの事業領域の外へ拡大展開するのはなかなか難しいものです。それでは成長が限られてしまいます。各事業部の間の周辺領域に新しいニーズが潜んでいるので、そこを狙います。世間で異業種連携が盛んに叫ばれていますが、日清紡は異業種連携がグループ内でできます。わざわざ外に求めなくても、まずは社内で連携しようということです。

とはいえ、事業領域が異なると、言葉も文化も違いすぎて、お互い理解できません。最初は何を言っているのか分からないほどです。それを一つずつ実施することで、見えてくることがあります。一緒に動くことで理解できることがあります。最近は、それぞれの強みを生かせば、結果がついてくることも分かってきました。

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