辻本流 撃つは巨砲のみ
カプコン「モンハン」リアル極める新作

(1/2ページ)
2017/9/22 6:30
保存
共有
印刷
その他

カプコンは21日に千葉市で開幕した「東京ゲームショウ2017」で最新ゲーム「モンスターハンターワールド」を初公開した。累計4000万本を販売してきた人気シリーズだが、今回は最新技術を駆使し同社を世界屈指のソフト会社に育てた創業者の辻本憲三会長兼最高経営責任者(CEO)が理想とする「ハリウッド映画」のような大作に仕上げた。スマートフォン(スマホ)ゲームが世界を席巻するなか、あえて「本物」志向を貫く辻本経営に勝算はあるのか。

カプコンの「モンスターハンター:ワールド」のブース(21日、千葉市美浜区の幕張メッセ)

カプコンの「モンスターハンター:ワールド」のブース(21日、千葉市美浜区の幕張メッセ)

「ハンターたちが今まで以上に縦横無尽に動いてモンスターを倒せるから面白い」「水面(みなも)の揺らめきや泥のとびはねのような描写もリアルで現実にいるような感じだ」――。幕張メッセのゲームショウのカプコンブースで来年1月発売予定のモンハンワールドを遊んだ来場者の多くがため息をもらした。

恐竜のような多くのモンスターが飛び交う大自然の中を探検するモンハンは04年の発売以来、大ヒットが続く。仲間同士で一緒に遊んでモンスターを倒すために若者が屋外で集まる「モンハン現象」も起きた。ただ、最新作のモンハンワールドでは大きく進化したというのが業界関係者の一致した見方だ。

辻本会長が11年以降、自社の開発体制の抜本的な強化を進めてきた成果が表れた。100億円を投じて16年に開設した研究開発第2ビル(大阪市)などでは3DやVR(仮想現実)といった最新の映像・音響を制作できる設備を導入。それをフル活用した最初の大作がモンハンワールドだ。

現場には常に「もっとクオリティを上げろ」と叱咤激励する辻本会長も最新作には「とても満足のいくできになった」とし、社外の会合でも「すごいソフトができた」と紹介しているほどだ。

新開発棟の目玉は究極的な3D映像を作成できる「モーションキャプチャースタジオ」だ。幅12メートル、奥行き8メートルで、高さが7メートルという大きな空間を使える。体に36カ所の特殊マーカーをつけて、その動きを36台の赤外線カメラで撮影する。7メートルの高さからマット上に飛び降りたりすれば、手足の関節の動きなども完璧に捉えられる。

モンハンシリーズの総合プロデューサーである辻本良三氏は「(スタジオ活用で)銃を撃った後の体の反動の動きなどをリアルに再現できた」という。キャラクターのわずか0.5センチメートルぐらいの微妙な動きさえ、3D映像で容易に作れる。

辻本会長は最近5年間、自社の開発力の強化を進めた。開発者は年100人単位の新規採用で2000人を突破。21年度には2500人にする。開発費も売上高の3割以上だ。世界的なヒット作を抱えても連結売上高は900億円弱の企業だ。自社で開発を抱え込むリスクは大きい。それでも辻本会長が揺らがないのは「カプコンのゲームはハリウッドで人気のアクション映画のように」という強い思い入れからだ。

今年1月発売のホラーゲーム「バイオハザード7」も辻本イズムを象徴する商品だ。家庭用ゲーム機向けでは初めて全編でVRに対応した。暗闇にうごめくゾンビが連続して襲いかかり、登場キャラクターが次々に残虐に殺されていくシーンには賛否両論があるが、その世界観を忠実に実現するために大型投資をしている。

ゲームを制作する「エンジン」と呼ばれる開発ソフトを自社で作った。投資額は100億円規模とみられる。汎用ソフトと異なり暗闇の中の微妙な影などもクリアに映像化できるようにした。一部の開発者たちが将来を見据えて自発的にVR技術を長く開発していた成果を生かした。開発担当の竹内潤執行役員は「良いものを作りたいという開発者の意欲に応える経営の風土がある」と強調する。

開発体制も作品ごとに集まり突貫工事で作るやり方ではなく、3D映像制作など専門技術者一人ひとりに週単位で仕事を割り振る方式に切り替えた。「自動車メーカーの新車開発を参考にした」(竹内執行役員)。これも辻本会長の改革で、大作を連発できる強みとなっている。

  • 1
  • 2
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]