2017年11月19日(日)

株主しか喜ばない米法人減税

The Economist
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2017/9/22 6:30
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The Economist

 米国で、法人減税をめぐる議論が滞っている。歳入減を補う唯一確実な方法は、米国企業が海外に滞留させている現金への課税だ。だが、この手法は3つの理由で効果がない。投資の活性化につながる方策を考える必要がある。

 ホワイトハウスはずっと前から、税の抜け穴を塞ぎ、税控除を撤廃して、減税の財源にすると約束してきた。減税分を補う方策を探している米連邦議会がほぼ確実に取り上げる策が一つある。米国企業の海外子会社が積み上げている膨大な現金への課税だ。

トランプ大統領(左)は記者団に対し「減税は米企業を飛躍的に成長させる」と強調した(14日、米フロリダ州)=AP

トランプ大統領(左)は記者団に対し「減税は米企業を飛躍的に成長させる」と強調した(14日、米フロリダ州)=AP

 両院合同租税委員会の試算によれば、2015年現在、米企業の海外子会社は合計2兆6000億ドル(約280兆円)の利益をため込んでいるという(ドナルド・トランプ大統領はこの額が3兆~5兆ドル=約320兆~540兆円=に上るとしている)。

 だが、残念なことに、この現金を米国内に還流させても、恩恵にあずかることができるのは株主だけで、それ以外の誰の利益にもならないだろう。

 米企業が海外にお金をため込む最大の目的は、法人税の支払いを回避することにある。海外で得た利益は、米国に送金しない限り課税されない(外国政府に支払う税金分は課税対象から外れる)。

 未課税の利益が膨れ上がるにつれ、共和党議員も民主党議員も、(潜在的な財源として)物欲しげな視線を向けるようになった。米大統領の座をトランプ氏と争ったヒラリー・クリントン氏はかつて、米企業が海外にためた資金に課税し、それを原資にインフラ銀行を創設しようと主張したことがある。

■3120億ドルが株主の懐に

 企業が海外にためたお金を米国内に還流するよう促す試みは、今に始まったことではない。議会は04年、この目的に沿って免税措置を講じた。税率を通常の35%から5.25%に引き下げることで、海外利益を還流するよう促したのだ。

 この法案を推進する人々は、これで投資ブームに火が付くと語った。だが、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領の経済顧問は、そんなにうまくはいかないと警告した。彼らの懸念は正しかった。入手可能な信頼性の高い調査によれば、この措置は米国内の投資も雇用も増やすことはなかった。

 代わりに、米国内に還流した3120億ドル(約34兆円)はすべて、株主への利益還元──1株当たり60~92セント(約65~100円)──に充てられた。株主への利益還元を防ぐための規制は効果を発揮しなかった。

 今回は当時と状況が異なる。共和党は一時的な免税以上の措置を講じる意向だ。他の先進諸国が採用しているのと同様の「源泉地国課税」方式に転換すると明言しているのだ。つまり、米国内で稼いだ利益だけを課税対象とすることによって、利益を海外にとどめようという考えをそもそも起こさせないようにする。

 だが、仮に新しい税制に転換するにせよ、旧制度の下で積み上がった海外利益をどう取り扱うか決める必要がある。国内への還流を図ったとしても、恐らくは04年と同じ結果しかもたらさない。にもかかわらずトランプ氏は、「経済の停滞に苦しむ米国に、数十億ドルもの新規投資がもたらされるだろう」と述べている。

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