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プレミアリーグ、色の異なる3強の争い

今季のイングランド・プレミアリーグは連覇を狙うチェルシー(3勝1分け1敗)とマンチェスター・ユナイテッド(4勝1分け)、マンチェスター・シティー(4勝1分け)の3強が好スタートを切っている。いずれも監督が就任して2年目。それぞれの特徴が鮮明に出ていて面白い。

マンチェスターUはCFルカク(エバートン)を獲得し、「怪物ぞろい」の印象がまた濃くなった。MFにポグバ、フェライニ、FWにルカク、マルシアルと巨漢ぞろい。イブラヒモビッチも故障を抱えているものの再契約に至った。

マンU、勝ちきれるチームに

とにかくマンチェスターUは「でかくて、強くて、速い」。まさにプレミア仕様の「骨太」の陣容で、ダイナミックに力で押し切れる。

中盤にモウリーニョ監督がよく知るマティッチ(チェルシー)を加えたのも大きい。当たりに強いマティッチとポグバが中盤の底に位置することで、圧力がとてつもないものになった。

ポグバはおっちょこちょいで、信頼しきれないところがあるが、マティッチはバランスを取ってくれる。彼が加わったことで、ポグバが攻めに出ていっても穴が空くようなことがなくなった。

もとはウイングのバレンシアも頑健だからだろう、右SBに固定。CBもジョーンズ、バイリーら強い選手がそろっていて、GKにはデヘアがいる。モウリーニョ監督らしく、まずは守備を固めてカウンターを狙うメンバーがそろった。

ルカクは強さ、高さだけでなく、DFを振り切るスピードもある。ムヒタリャン、マタら周囲の選手がうまく特徴を引き出してくれている。強豪に移り、才人に囲まれ、輝きを増した好例だろう。

ムヒタリャンやドリブラーのラシュフォード、リンガードにはスピードがある。フィジカル面に優れた面々がかみ合ったときの速攻は鮮やかで力強い。

昨季は18勝で5敗しかしていないのに、引き分けが15と多く、6位に沈んだ。よりパワフルになった今季は守備が安定したうえに攻めの切れ味が増し、勝ちきれるようになった。

2013年の優勝を最後に名将ファーガソン監督が退任してから、マンチェスターUはぐちゃぐちゃになった。モウリーニョ監督を迎えた昨季の半ばにようやく混乱が収まり、欧州リーグを制した。「さあ、次はプレミアリーグのタイトル奪回」という雰囲気が生まれたのではないか。

欧州チャンピオンズリーグ(CL)優勝までの戦力はないが、爆発力を秘めているし、モウリーニョ監督はカップ戦の戦い方がうまいので、4強あたりまで進んで「ひょっとすると」と思わせるかもしれない。インテル・ミラノ(イタリア)、チェルシーでの経歴を振り返ればわかることだが、この監督は就任2年目に結果を出す。

マンC、異彩放つ存在に?

マンチェスターCのグアルディオラ監督は就任1年目の昨季、自分の色を出せなかった。バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)監督時代のようにポジションがあってなきもののような前衛的なサッカーを打ち出せなかったのは、プレミアリーグのレベルが高いため、実験をする余裕がなかったからだろう。

しかし、この監督はボール保持を哲学とし、攻撃を流動的に展開したいに違いない。今季はもしかすると、そのトライをするのではないか。

両アウトサイドにウォーカー(トットナム)、メンディー(モナコ)という攻撃力に優れた選手を獲得したのが大きい。攻めに出ていく推進力と走力が魅力で、MF陣をどんどん追い越していき起点をつくれる。

それによってダビドシルバとデブルイネが中央で攻めを構築できるようになった。昨季とは違って、真ん中でパスのつなぎ役をしたうえで、左右のスペースに出ていき、さらにパスワークを続ける。

FWのアグエロとガブリエルジェズスに高さがないので、単純なハイクロスを上げても仕方がない。パスをつなぎながらペナルティーエリアの中まで入っていくのがいまのマンチェスターCのサッカーだ。

特にダビドシルバが中寄りでプレーできるようになったことが大きく、アグエロらにDFの裏を取らせるスルーパスが盛んに出る。

もしかするとグアルディオラ監督はB・ミュンヘンでラーム、アラバにさせたようなイメージで、ウォーカー、メンディーをより流動的に動かすかもしれない。そうなってくるとマンチェスターCはプレミアリーグの中で異彩を放つ存在になる。

いまから楽しみなのがマンチェスターUとマンチェスターCによるダービーマッチだ。ダイナミックなマンチェスターUと繊細なマンチェスターCがどんな攻防を見せてくれるのだろう。

パワーのあるマンチェスターUの選手の間をマンチェスターCがどこまでパスでかいくぐっていけるのか。そこが最大の見どころになる。途中で引っ掛けられると、マンチェスターUに一気にゴールまで持っていかれる危険性がある。攻めを加速されてしまうと止めようがなくなる。

逆にマンチェスターCの中盤は小粒なので、マンチェスターUの力攻めに耐えられるのかどうか。アンカーのフェルナンジーニョにしても線は細いし、その両脇を突かれたときの備えも考えなくてはならない。マンチェスターCにしてみれば、つなぎまくって優位に立つしかないのかもしれない。

チェルシー、完成度は一番

昨季の王者、チェルシーはコンテ監督のもと、やることが全く変わっていない。堅く守って、カウンターで仕留め、したたかに勝ち点を重ねる。昨季、3バックに変更してからうまくいったので、その形が基本になる。CBダビドルイスが余計なことをしなくなったので、守備に安定感が出た。

中盤のカンテのところで確実にボールが取れるのが何よりだ。汚れ役をしているのに、この選手はタックルにいって倒れたり、倒されたりすることがない。全く無理をしなくても、相手についていってパッと足を出してボールをするりと奪ってしまう。

しかも、今季はそこから正確な鋭い縦パスを出す力が増している。自分でも迷わず攻めに出ていく。昨季、レスターから移籍し、チェルシーという強豪でプレーしたことで風格が出てきた。

このカンテの相棒としてバカヨコ(モナコ)が加わったのも大きい。マンチェスターUのポグバと同じタイプで、ダイナミックに動いて攻撃に絡んでいける。故障明けのアザール、ペドロ、セスクらにバカヨコが絡むことで攻めに変化が出る。

両サイドにはアロンソ、モーゼスらがいて、前線には新加入のモラタ(レアル・マドリード)が構える。このモラタが早くチームにフィットできるかどうかがカギになるだろう。

昨季は出場できなかった欧州CLにも参戦することをにらみ、MFにドリンクウォーター(レスター)、DFにルディガー(ローマ)、クリステンセン(ボルシアMGから復帰)らを加えて、ローテーションが組めるようにしている。

プレミアリーグは07~09年にマンチェスターUが3連覇して以降、連覇したチームがない。それだけにチェルシーの連覇がなるのかどうかが気になる。コンテ監督のサッカーが浸透しているので、完成度という点では明らかに一番だ。

ケーン、アリを擁する昨季2位のトットナムの得点力も目を引くが、チェルシー、マンチェスターU、マンチェスターCが3強を形成するのは間違いない。最もイングランド的なマンチェスターU、ますますスペインみたいになっていくであろうマンチェスターC、まるでイタリアのようなチェルシー。それぞれに特徴があって、優勝争いが興味深い。

(元J1仙台監督)

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