2019年2月22日(金)

アンジェスに春は来るか 腰痛薬、米で治験

2017/9/19 6:30
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アンジェスは米国で10月にも、椎間板が炎症を起こす腰痛の薬について臨床試験(治験)を始める。米国で最大50万人の需要をみすえる。赤字続きのなか、今年夏に事業を絞って腰痛薬を優先品目の一つにしており、このほど調達した80億円を開発に生かす。2002年に上場した同社に春は来るか。

アンジェスは今夏、資金を効率的に使うため事業を絞り込んだ(大阪府茨木市の研究所)

アンジェスは今夏、資金を効率的に使うため事業を絞り込んだ(大阪府茨木市の研究所)

米国で患者への投与を始める薬は、体を動かしたときの衝撃を吸収する椎間板の炎症や痛みをおさえる。椎間板に直接、注射して効き目を出す。アンジェスの山田英社長は市場について「米国で投与対象にあたる人は最大50万人、保守的に見て16万人いる」と話す。

薬はNF―κ(カッパ)BデコイオリゴDNA。ヒトのDNAに取りついて炎症に関連する成分を生みだすたんぱく質、NF―κBを働かないようにする。

デコイはおとりを意味する。つまりこの薬は、たんぱく質のNF―κBが本物のDNAと勘違いして取りついてしまうような偽のDNAだ。アンジェスが人工的に作った。

動物実験で腰痛症に対する効果を確認し、今年4月に米食品医薬品局(FDA)から治験開始の許可を得ていた。19年にも治験の結果をまとめる。正式な薬として販売される場合、1人の治療費は2000~3000ドルと想定、米国の市場規模は300億~500億円とはじいている。

アンジェスは開発費用が十分にないため、製薬大手への権利販売を狙う。他社がこの薬を最終的な医薬品として開発・販売、アンジェスは販売額の一定割合のロイヤルティーをもらう。通常は1~2割だが、同社は原料を供給する方針で、今回は2~3割になると見込まれる。

最大の懸案は、アトピー性皮膚炎で失敗した同じ成分で試験が成功するかという点だ。NF―κBデコイは、同社がアトピー性皮膚炎の薬として開発していたが、16年7月に第3相の治験で失敗し、開発がストップした。

山田氏は「今回は注射薬であることがポイントだ」と話し、勝算はあるとの考えを示した。椎間板に直接、薬を注射するので確実に成分が届く。血流が少ないため椎間板にとどまり、効果を発揮しやすいとみている。

アトピー性皮膚炎では、軟こうを塗って薬を投与したが、皮膚にはバリアー機能があり、薬が十分に届いていなかった可能性が否定できないという。

治験結果を分析したところ、皮膚バリアーが破れた「びらん」という状態の重症患者には効果がみられた。患部に到達すればきちんと効く、というのが同社の考えだ。

競合企業がバイオ医薬品を開発しているが、成功例はまだない。類似疾患である椎間板ヘルニアをみても、生化学工業が14年1月に薬の承認申請を出したが、製造段階の審査が長引いてまだ承認されていない。

アンジェスは、遺伝子治療薬や核酸医薬の研究開発を目的として設立したメドジーンが前身だ。1999年12月の設立から、あと2カ月ほどで丸18年になる。

芽が出ず赤字が続くなか、今年夏、経営効率化のため開発パイプラインを見直した。残したのはNF―κBデコイ、年内に治験入りをめざす高血圧向けDNAワクチン、重症虚血肢の遺伝子治療薬の3つ。市場性や成功率の見通しで選んだ。

このうち遺伝子治療薬は、10月に厚生労働省へ製造販売の承認申請を出す。遺伝子治療はある遺伝子を患者の体内に入れ、その遺伝子が作りだすたんぱく質で病気を治す。順調にいけば、同社が国内初の遺伝子治療薬メーカーとなる。

このニュースに株価は1年ぶりの水準に戻った。第三者割当でこのほど80億円を調達したことも合わせ、同社に期待がかかっていることはわかる。何より、新しい技術による薬の誕生を患者が待ち望んでいる。

(企業報道部 野村和博)

[日経産業新聞9月19日付]

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