/

ドイツの自国第一主義(十字路)

トランプ米政権の自国第一主義が話題だ。その主張はシンプルな重商主義で、貿易赤字削減のために保護主義的な対応を掲げる。ドルは昨年11月の大統領選直後こそ主要通貨に対して上昇したが、実効為替レートは今年に入ってから下落傾向をたどっている。

10年ほど前のリーマン・ショック以降、どこの国も本音では金融緩和により自国通貨を切り下げる通貨戦争を行ってきた。日本に加え、米欧もバランスシート調整に陥ったためだ。それは他国の内需を奪う新たな次元の重商主義、新重商主義にほかならない。

米連邦準備理事会(FRB)の2007年以降の金融緩和も、欧州中央銀行(ECB)が始めたマイナス金利も自国通貨を引き下げる政策だ。日本は長らく通貨戦争の敗者に甘んじてきたが、アベノミクスで流れが変わった。その一番の成果は、日銀の異次元金融緩和により円高のワナから逃れたことだろう。

現在の新重商主義の目的が黒字獲得にあるとすれば、その最大の勝者はドイツだ。経常黒字は国内総生産(GDP)対比で約8%に上る。欧州全体も世界最大の黒字地域となった。経常黒字の日本や中国は財政赤字による拡張的マクロ政策を行うが、ドイツは財政も健全。黒字を一段とため込む。しかも、欧州単一通貨であるユーロは、ドイツの競争力と比べて過度に安い。その恩恵で構造的な黒字が生じる中での財政緊縮は、他国の内需を奪う近隣窮乏策だ。

米国や為替を管理する中国、アベノミクスを掲げる日本も自国第一主義に変わりはない。ただ、ドイツはユーロによる構造的な黒字化に加え財政緊縮策が合わさり、最も色合いが濃い。今月の総選挙で再任される見込みのメルケル政権で、この潮流は継続する。欧州内ではドイツの政治面での支配的地位が高まる。強すぎるドイツは、欧州が内包するリスクでもある。

(みずほ総合研究所チーフエコノミスト 高田創)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連企業・業界

企業:

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン