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迫る台風18号 強い勢力のまま日本接近の理由

編集委員・気象予報士 安藤淳

台風18号が強まりながら日本に近づき、16~18日の連休に列島の広い範囲で大きな被害を起こす可能性がある。なぜ日本の近くで急速に発達したのか。今後、何に警戒すべきか。襲来を前にポイントをまとめた。

台風18号が急速に強まったのは、9月13日から14日にかけてだ。中心気圧は12日午前9時から24時間の間に10ヘクトパスカルしか下がらなかったのに、13日午前9時からの24時間には3倍の30ヘクトパスカルも低下して935ヘクトパスカルとなった。気象衛星の画像を見ると、12日には渦巻き構造は見えるものの台風の目がはっきりしなかったが、14日には非常にくっきりと見えるようになった。雲全体が体格のよい若者のように引き締まり、最盛期を迎えたことを示した。

最盛期を迎え中心気圧が935ヘクトパスカルまで下がった台風18号は、目がくっきりして雲の渦が引き締まっている(14日午後9時、気象庁ホームページから)

台風の発達のカギを握るのは海水温だ。九州の南には海水温が平年に比べて1~1.5度高い30度以上の海域が広がり、台風はちょうどその上を移動した。わずか1度ちょっとの違いだと侮ってはいけない。広い海の大量の水の温度を1度上げるには、膨大なエネルギーがいる。台風にとっては、まさにふんだんに燃料補給を受けている状態が続いた。一帯には大量の水蒸気があり、これが上昇しながら雲粒、そして雨粒になる。その際に熱を放出して上昇気流はますます勢いを増し、雲の発達と台風の成長を促した。

海水温は九州の沿岸近くでも27~29度ある。余計な気流の乱れなどが起きなければ、台風の勢力は、17日ごろとみられる上陸の直前まであまり衰えないだろう。中心付近では最大風速が秒速50メートル程度と、樹木や街灯が倒れトラックや電車の横転も起こりうるような強風が吹く恐れがある。

この台風に備えるにあたり、注意すべき点が大きく3つある。まず、台風が上陸する前の早い段階から西日本や東日本で大雨のおそれがあるということだ。

九州には秋雨前線がかかっており、その北側は秋の涼しい高気圧の勢力圏だ。南側には夏の名残の暖かく湿った空気がある。前線付近ではこれらの気流がぶつかり、ただでさえ雲が発達し雨が降りやすい。そこへ、台風の周りを回る空気の流れに載って水蒸気をたっぷり含む高温の風が南から入るので、雲はさらに発達する。15日以降、山岳部の南側や東側斜面で大雨が降りやすいほか、それ以外でも地形によっては積乱雲が次々に発達する「線状降水帯」ができる可能性がある。

注意点の2つ目は台風が日本海に出るか、それとも日本の南岸沿いを進むかによって、大雨や強風の状況がかなり違ってくるという点だ。

予測精度が高いことで知られる欧州中期予報センターは、台風は九州から日本海沿いに進む公算が大きいとしている。この場合、九州から東海にかけての地域など、西日本が豪雨に見舞われるおそれが大きい。台風の東側の領域で、南から北へ向かう強い気流にのって発達した雲が移動してきて陸地にぶつかるからだ。

過去の例から、こうしたケースでは関東の雨の予測は微妙になる。台風が日本海の真ん中あたりまで進んでしまうと、もっとも発達した雲は近づかない。周辺の雲も、一部は箱根の山に遮られ、それほど大雨が降らずに終わる場合があるからだ。

台風の東側では、全体として南から北へ向かう台風自体の動きと、その周囲の南寄りの風とが重なるので、特に激しい風が吹く。このため、西日本から東日本の広い範囲で強風や、竜巻などの突風が吹くおそれがある。

また、南に面した湾には高波が押し寄せる。台風の中心気圧は上陸とともに上がるとみられるが、それでもかなり低い。九州沿岸では台風の上陸時に海面の吸い上げ効果が想定され、高潮と大波が重なって浸水が起こる危険もある。台風の接近している時に、海に近づくのは極めて危険だ。

一方、台風のコースが日本の南岸沿いになった場合は、台風の北側の雲が通過する際に太平洋側の各地で雨が降りやすい。関東から東北にかけては海からの湿った風の影響で大雨になる可能性がある。本州の南岸を進む「爆弾低気圧」と呼ばれる強力な低気圧の場合と似たパターンだ。気温は低く、風は冷たい。

本州の真ん中を縦断した場合はどうか。山が多いので、台風本体はかなり勢力を落とすが、一部の活発な雲が残って短時間ながら局地的な大雨を降らせることはあり得る。ただ、こうした場合、台風はまるで分身を作るかのように日本海などに「飛ぶ」こともある。このあたりのメカニズムは必ずしもよくわかっていない。予測が難しくなるだろう。

最後の注意点は、台風が北海道などの北日本に再上陸するおそれがあるという点だ。台風が北上を続ける際に北日本の上空に寒気が残っていると、激しい上昇気流が起きて局地的な豪雨をもたらす可能性が強まる。近年は北海道にも時折、台風が襲来するが、それでも本州に比べれば対応には不慣れだろう。台風の勢力は、九州付近にあった場合に比べればかなり衰えているはずだが、それでもかなりの雨と風を伴う場合がある。週明けにかけて、最大限の警戒が必要だ。

今回の台風18号の進路をめぐっては、気象庁は当初、日本の南海上を中国大陸へ向けて西進して本州にはほとんど影響を及ぼさないと予想していた。ところが、熱帯の海の上を吹く風や、中・高緯度の大気の流れのちょっとした違いを反映して、途中から日本に向かうコースに変えた。この予測の変更は、スーパーコンピューターによる計算の結果による。

ベテランの予報官でも、短時間にこれだけの劇的な予測の見直しはできないだろう。かつてはスパコンが極端な答を出せば、予報官がそれを修正した。しかし、いまや予報官よりもスパコンが信頼される時代だ。計算によって得られた最新の結果をもとに対策を立てるのが一番無難といえる。ただ、最新の予測では、再び進路がやや西寄りに変わり気味のようにも見える。多少、コースがずれても大丈夫なように、余裕をもって備えをしておきたい。

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