2017年11月25日(土)

アップル、通信に新機軸
ITジャーナリスト林信行氏寄稿

2017/9/14 6:30
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 米アップルは12日、主力のスマートフォン(スマホ)「iPhone(アイフォーン)」の新モデル「X(テン)」を発表した。価格は999ドル(日本では11万2800円)から。発売日は11月3日。10月27日から予約を受け付ける。今回発表されたアップルの新製品について、IT(情報技術)ジャーナリストの林信行氏に分析してもらった。

新型iPhoneを手にするアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)=右(ロイター)

新型iPhoneを手にするアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)=右(ロイター)

 今回、アップルはiPhoneX以外にも新製品を発表した。iPhoneに頼らずに単体で通信・通話ができるモデルを加えた3世代目の「アップルウオッチ」、4K画像に対応した「アップルTV」、現行のiPhoneの後継となり、無線充電ができる「iPhone8」シリーズだ。iPhoneX以外は月内に発売される。

 アップルはハードとソフトのメーカーであると同時に業界のルールメーカーだ。圧倒的販売力を武器に世界のインフラ企業と交渉し業界の新しいルールをつくる。今回はアップルウオッチとアップルTVで新ルールをつくった。

 前者では世界中の電話事業者と話し合い、1つの回線(電話番号)をiPhoneとアップルウオッチの双方で共有できるようにした。iPhoneとアップルウオッチの双方に同時に着信し、どちらでも通話できる。

 1つの回線を複数の携帯電話やIoT(あらゆるモノをネットにつなぐ)機器との間で共有する試みは、すでにNTTドコモが何度か取り組んできた。だが、特殊な条件と操作が必要で一般的ではなかった。

 アップルはこれを世界の20の電話事業者と契約し、一般化する。今後は他のIoT機器でもアップルウオッチで使われているものと同様の「eSIM(電話の契約情報が入ったSIMチップの内容を更新可能にしたもの)」を使い、月額電話料に追加料金を加えて回線を共有するスタイルが広がるかもしれない。

 アップルTVでは、「iTunes(アイチューンズ)」ストアなどで買い取りやレンタルができる映画を順次、4Kの画質にすると発表した。すでにその映画をハイビジョン画質で購入している場合、無償で4K版に交換できるように、映画会社などから了承を取り付けたようだ。4K映像コンテンツを広める起爆剤となるだろう。

 「X」と「8」の2つの新型iPhoneは、画像認識技術と結びついたカメラが革新的だ。

 特にレンズを2つ搭載したデュアルレンズ仕様のモデルは、瞬時に被写体と背景を自動で切り分けるといった画像加工がリアルタイムでできてしまう。どこで撮った写真でもスタジオ撮影風に加工し、後から効果を変えることもできる。目の前に置かれた机の天板などを画像認識し、その上にバーチャル空間を展開できる拡張現実(AR)技術も今後、一気に花開きそうだ。

 アップルのライバルであるアンドロイド陣営でもデュアルレンズ仕様の機種はある。だが、アンドロイドの技術として標準化されてはいない。アップルと同じレベルに追いつくには時間がかかる公算が大きい。

 無線充電では、電磁誘導方式で「Qi(チー)」と呼ばれる規格を採用した。トレンドメーカーであるアップルが採用したことで、無線充電の規格にチーを選ぶ動きが一気に広まることが予想される。

 アップルは、まず製品がどうあれば人々が喜ぶかを真っ先に考える企業だ。そのためには周りの企業に働きかけ、それまでの業界の常識さえも書き換える強さがある。ここには日本の企業も見習うべきところがある。

[日経産業新聞 9月14日付]

 


 林信行(はやし・のぶゆき) 最新の技術が生活や文化に与える影響を25年以上にわたって取材。米マイクロソフトや米グーグルのサイトで連載を執筆したほか、海外メディアに日本の技術文化を紹介している。

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