2017年11月23日(木)

サンゴ再生にチタン・電流

2017/9/13 6:30
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 海の宝石と呼ばれるサンゴ礁だが、近年は地球温暖化の影響で「白化」という死滅する現象に歯止めがかからない。関西大学の上田正人教授らの研究チームは、チタンを足場として使ったり、幼いサンゴに微弱な電流を流したりして成長を促す方法でサンゴの再生に取り組んでいる。水流や医工連携の研究を応用した形で注目を集める。

サンゴを入れた実験用水槽

サンゴを入れた実験用水槽

 和歌山県串本町。沖合には「ミドリイシ」という種類のサンゴ礁が広がる。ミドリイシは平らに広がった基盤の上に多数の短い枝が林立して生息している。褐色や淡い紅色、淡い青色をしているのが特徴だ。

 関西大や秋田大学などの研究チームは7月から、水深3~5メートルの場所にセメントの土台を固定し、その上に幼いミドリイシを置いて育てる実験に取り組んでいる。上田教授はチタンや酸化チタンを幼いサンゴに密着させる方法で成長を促している。

 人工関節、歯のインプラントといった医工連携の研究を進める中で思いついたアイデアを応用した。サンゴが人と同じく、有機物を出して造骨細胞を作る性質を生かした。チタンの表面に細胞を出して増殖していくのではないかという仮説の正しさを実証中だ。

 上田教授は「チタンは海水で劣化せず交換不要。メンテナンスが楽でコスト面でも有利だ。大きなプロジェクトをしなくても実用化できる」と話す。

 研究チームを率いる関西大の高橋智幸教授はもともと、津波や水流の構造物への影響を研究している。海流による振動現象を水力発電に応用する研究をする中で、海外で幼いサンゴに微弱な電流を流して成長を促す方法が研究されているのを知ったのが、サンゴ再生に取り組むきっかけだ。

 陸上からケーブルを引いて電流を流すのは現実的ではない。最も自然物に近く、サンゴが生育しやすい物質としてセメントの土台を作り、潮力などを利用して柱を振動させて発電する方法を考えた。一般的なセメントに火山灰などを混ぜるなどして成分を少しずつ変えた土台を約8種類、串本沖に置いた。

 高橋教授によるとミドリイシ系のサンゴであれば「1年で数センチ成長する」という。ただ実用化を視野に入れると、振動させるための柱が30センチと長くなってしまう。そこで約3センチに小型化する試みをしている。

 サンゴの白化は年々深刻さを増している。フランス国立科学研究センターは9月、白化現象が沖縄周辺で最大70%に及んでいる調査結果を公表した。南太平洋ではサモア周辺で最大90%が白化、ツバルやキリバスの周辺の海域ではほとんどが死滅状態なっているという。全世界的にサンゴの白化が進行しており、海外の研究機関でも再生する研究が進められている。

 研究チームがサンゴ再生を始めたのは2015年7月。上田教授と高橋教授はともにダイバーで「サンゴの白化を食い止めたい」と思ったのが研究の動機だ。

 今後は静岡県沖でも実験を開始する予定だ。高橋教授は「将来的には沖ノ鳥島でも実験をしていきたい」と意気込む。

(大阪経済部 川口健史)

[日経産業新聞 9月13日付]

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