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ブロックチェーンで取り戻す個人データの所有権

2017/9/14 6:30
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 ブロックチェーン技術はここ2~3年、分散型インターネットの次の目玉として絶賛されている。スタートアップ各社はこの技術を使って集中型のオンラインサービスが抱える多くの問題を解決するソフトウエアを開発し、「PoC(概念実証)」を実施するために、従来型の資金調達やトークンの発行で数十億ドルを手にしている。だが、ブロックチェーン技術は果たして生活全般に浸透するのだろうか。

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■「誰もが自分のデータを所有できるようになる」

 ブロックチェーンは外部からサーバーに大量のデータを送りつける「DDos攻撃」やデータ改ざんから守ってくれる上に、不正投票の防止やトランザクション処理の高速化、コスト削減、透明性や検閲耐性の強化も保証する。こうした特性はIT(情報技術)専門家やソフトウエア開発者なら誰でも価値を理解できるが、一般ユーザーにとってはいわば当たり前のものだ。ユーザーは既存のクラウドサービスから、表面的には同じような特性を持つえたいのしれない代替サービスに乗り換えるべきなのか。音声・テキストチャットツール「スカイプ」は問題なく動くのに、なぜブロックチェーンを使った代替ツールに切り替えるべきなのだろうか。

 ブロックチェーン技術を浸透させるには、一般ユーザーに役立つ価値を具体的に示さなくてはならない。これは「誰もが自分のデータを所有できるようになる」ことだと筆者は考える。

 米フェイスブックや米グーグルなどのIT大手はユーザー情報を大量に集めて蓄積し、これを基にアルゴリズムを改良してサービスを運営し、利益を上げている。ところが、ユーザーにはデータの所有権は無く、自分の情報の保管や保護をこうした集中型サービスに頼らざるを得ない。つまり、ユーザーのデータはこうしたプラットフォームに実質的に囲い込まれ、選択やコントロールを奪われているのだ。フェイスブックにアカウントを閉鎖されれば、長い時間をかけて築いたデータや交流関係、評判、好み、やり取りは全て失われる。同じことはグーグルや動画共有サイト「ユーチューブ」、アマゾン・ドット・コム、ツイッターなどにも当てはまる。

 さらに、米消費者信用調査会社エキファクスへの不正アクセスのような例もある。1億4300万人の社会保障番号や住所などのデータが流出し、ハッカーやなりすまし詐欺の犯罪者にさらされた。

 これこそがブロックチェーンと分散台帳が消費者に真の価値を約束できる分野だ。ブロックチェーンはユーザーのデータをサーバーアプリケーションから切り離せる設計になっているからだ。データの管理をユーザーに還元する取り組みを進めている企業は何社かある。

 その一つは、サービス事業者がユーザーのデータを所有しない分散型インターネットの構築を目指すブラウザー「ブロックスタック」だ。このブラウザーはブロックチェーンを活用したIDを通じて、様々なウェブサイトやサービスへのアクセスを提供する。IDはユーザーが所有し、アプリを新たに利用する際はアプリのサーバーにあるプロフィル情報ではなく、このIDを使う。IDをアプリのバックエンドに暗号化して保存することで、アプリのデータを完全にコントロールすることもできる。グーグルのクラウドストレージ「グーグルドライブ」や、ネット上に文書などを保存するクラウドサービス「ドロップボックス」など、対応APIを持つサービスに利用できる。

 一方、ブロックチェーンを活用する別のオープンソースのプロジェクト「ピラー」は、個人データを収納する「スマートウォレット(財布)」の開発に取り組んでいる。ピラーはユーザーのデジタル資産をブロックチェーン上に保存・管理するモバイルアプリで、自分のデジタル資産を完全に所有し、コントロールできる。暗号通貨や健康記録、連絡先、書類などがこうした資産となる。ピラーは「消費者のデータ管理への関心が薄い」というもう一つの根本的問題にも対処しようとしている。ピラーは情報の登録や商品の購入など個人のデータが関わる場合に意思を示す人工知能(AI)アシスタントにもなる。ユーザーに必要なサービスを見つけると、デリケートな個人情報を複製したり事業者のサーバーに保管したりするのではなく、財布からデータを提供してくれる。

 「エニグマ」をはじめとするプロジェクトは、ブロックチェーンを活用し、プライバシーを保った状態でデータをクラウドサービスやサードパーティーに提供する。エニグマのプラットフォームではデータを暗号化して分割し、解読できない塊をネットワークのノードにランダムに分配することで、データを保護する。エニグマでは「安全な複数のパーティーによる計算」が使われる。つまり、それぞれのノードは個々のデータの塊を計算し、その結果をユーザーに戻す。ユーザーはこれを他のデータと合わせて最終結果を出す。ユーザーは自分のデータの塊をブロックチェーン上で管理・所有し、データ計算を求めるサードパーティーやサービスに実際にデータを渡すことなく、アクセス可否を決められる。

 ブロックチェーン技術を手がけるスタートアップが根底から変えつつあるもう一つの分野はソーシャルメディアだ。「ネクサス」や「インドース」といったプラットフォームは、ブロックチェーン上で情報を蓄積し、データのアクセスや共有、報酬をユーザーに管理させることで、プライバシーを強化し、データの所有を進める。

 ブロックチェーン技術の活用が進む背景には、インターネットを用途中心のモデルから、ユーザーが中心になって自分のデジタル記録を蓄積し、誰がそれにアクセスするかを決められる仕組みにシフトすべきだという考え方がある。

 ユーザーが自分の個人情報やデジタル資産の価値を真に理解するのは当分先だろう。だが、集中型サービスに自分のデータを蓄積させればどんな事態を招くのかに気付き、情報の管理を取り戻そうとするようになれば、ブロックチェーンは目を向けるべき技術になるはずだ。

By Ben Dickson(ソフトウエアエンジニア、テクノロジー専門のブログメディア「テックトーク」創業者)

(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)


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