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最重量級、久々の世界一 空手家・香川幸允(上)

2017/9/17 6:30
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 最強を争う格闘技の世界では最重量級は特別な重みを持つ。この夏、空手で日本から久々に最重量級の「世界一」が誕生した。

 7月に行われた非五輪競技の国際総合大会、ワールドゲームズ(WG)で男子組手84キロ超級を制した香川幸允(かがわ・ひでよし、テアトルアカデミー)である。日本から最重量級のチャンピオンは、1996年世界選手権を制した清水裕正以来の快挙。隔年開催の世界選手権の中間年に当たる今年は、WGが世界一を競う舞台だった。

身長192センチ、体重115キロの巨体は海外選手と比べても見劣りしない

身長192センチ、体重115キロの巨体は海外選手と比べても見劣りしない

 「代表チームの先輩たちが負けるのをずっと見てきた。自分が現役のうちにタイトルを取りたいと思っていた」と香川は言う。実は、香川自身も敗北の歴史に名を連ねてきたことを付け加えねばならない。

 2010年から4大会連続で出場してきた世界選手権は、いずれも8強にも残れなかった。本人いわく「全部ポカ。強い選手には勝つのに、名前も聞いたことないような相手にコロッと負けて」。昨年の世界選手権は初戦で元世界王者に勝ちながら、次戦で無印の南米選手に足をすくわれた。

 その理由がふるっている。「やる気が出なくて。変な相手だと集中力もすぐ切れる。試合中も『これに勝ったら次は何回戦……』とか考えてしまって」。生来の優しくてのんびりした性格も、勝負の世界に生きる者としては災いした。

東京五輪採用で大器目覚める

 そんな男が心を入れ替える転機になったのは、やはり東京五輪での空手の採用決定である。「自分の中でふつふつと沸き上がるものを感じた」。ただ、昨夏の決定以降、空手のメディア露出が増えてもスポットライトを浴びるのは、代表チームメートの世界王者ばかり。「五輪を狙える位置までいくためにも、世界で勝つしかないと思った」

 決意新たに臨んだWGでの戦いは、新生香川を印象づけた。予選リーグで世界王者のイラン選手、欧州王者のドイツ選手を下して進んだ準決勝。勝ち上がってきたのは優勝候補のクロアチア選手ではなく、地元ポーランドの中堅選手だった。先制を許す展開にこれまでの悪夢がよぎったが、しぶとく逆転勝ち。決勝では逆転また逆転という熱闘を制し、頂点に立った。

 「準決勝の逆転勝ちを見て、いつもの香川と違うと思った」とは日本代表監督の林晃。「これまでは厳しさが足りない部分があった。やっとその気になったんじゃないか」と30歳の待ちに待った開花を喜ぶ。

 身長192センチ、体重115キロの巨体は海外選手と比べても見劣りしない。プレッシャーをかけながら、相手が出てきたところにカウンターで合わせる突きが得意。林は「無駄に動かずにじっくり構えて、相手が出てくるところを居合でとらえる。これぞ武道の神髄という技を持っている」と語る。高度な技量を生かすも殺すも、気持ち次第だったということなのだろう。

 「やっと肩書もついた。ここからが勝負です」。東京まで3年。遅咲きの逆襲が始まる。(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊9月12日掲載〕

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