最新の市場情報

※営業日はリアル更新
日経平均株価(円) 20,307.69 +8.31
日経平均先物(円)
大取,17/12月
20,170 +20

[PR]

豊島逸夫の金のつぶやき

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

ドル安時代が到来か

2017/9/11 9:35
共有
保存
印刷
その他

 足元では北朝鮮の建国記念日に再度の核実験がなく、国連の制裁決議を待たず、市場は有事の円買いの売り戻しに動いている。有事の金も急落中だ。

 とはいえ、中期的なドル売り意欲は依然根強い。最大の理由はドル長期金利の低下だ。米10年債利回りは2%の大台を割り込む寸前まで低下してきた。その背景には、依然伸び悩むインフレ率、盛り上がらないインフレ期待がある。12月利上げの見込みも後退している。

 このディスインフレ(物価上昇伸び悩み)現象については様々な説があり、依然明確な結論は出ていない。

 ニューヨーク(NY)連銀のダドリー総裁は、最新の講演で「当惑」という表現を使いつつ、一時的というより構造的変化の可能性を示唆している。具体的理由として、(1)消費者がネットで店頭価格差を迅速に把握できる(2)リアル店舗からネット通販へのシフト(3)その結果として消費者のブランド・ロイヤルティーや売り手の価格支配力に変化が生じていること、などを挙げている。

 それでも同氏は経済成長率がトレンドを上回り、インフレ率を押し上げるので、金融緩和解除を段階的に進めることが妥当と判断している。ただし、この最新講演では、12月利上げに直接言及しなかった。

 さらに、いかにも唐突なフィッシャー米連邦準備理事会(FRB)副議長の早期辞任、イエレン氏の後継最有力候補であるコーン国家経済会議委員長のトランプ氏との人種差別発言を巡る確執も、FRBが徐々にトランプ色に染まっていく可能性を暗示しているかのようだ。そのトランプ氏は、自らを「低金利人間」と言ってはばからない。

 その「低金利好き」大統領が、金融規制の緩和に動いていることが、イエレン氏との溝を決定的にしている。リーマン・ショックを教訓とする金融規制改革法(ドッド・フランク法)の下で、金融機関への規制を進めてきたイエレン・フィッシャーのペアにとっては受け入れがたい動きであろう。一方、トランプ嫌いが多いウォール街でも、この金融規制緩和は歓迎されている。トレーディング部門縮小・廃止に追い込まれ、多くのトレーダーが解雇された経緯があるからだ。

 とはいえ、金融正常化の遅れと金融機関規制緩和が早晩バブルを招くとの議論も根強い。資産価格、特にNY株が直近で頭打ち気味とはいえ、依然、高値圏にとどまっている。特に2017年年初からの値動きを見るに、結果的には株も債券も同時に買われていることが不気味だ。一般的に株式市場は経済の先行き楽観論で育ち、債券市場は悲観論で育つもの。それがNY株も米国債も同時に「バブル」懸念が語られるほど買い進まれるということは、どちらかが間違っているわけだ。株式市場が間違っていれば株価の本格的調整となり、債券市場が誤っていれば、ドル金利急騰となる。

 外国為替市場ではドル短期金利の政策的引き上げが遅れ、ドル長期金利はインフレ期待後退。さらに米国債への「質への逃避買い」で下落傾向が見込まれることで、金利差によるドル売りが加速してきた。

 ただし、ドル安も一定の臨界点に達するとドル不安に変化する。一転してドルへの信認が問われる状況になる可能性を秘めるのだ。トランプ大統領がドル安政策に傾きつつ、金融規制を緩和することで「長期的にはドル高が望ましい」との建前も揺らぎかねない。ドルへの信認が薄れれば、外国人投資家の米国債購入意欲も薄れる。そもそも米国債の買い手としてFRBが後退するなかで、中国と日本の米国債保有が相対的にその存在感を増している。

 それゆえ市場の中期的な注目点は、そのドル安の臨界点が、ドル円でいくらなのか、ということだ。105円なのか、あるいは100円なのか。はたまた、「今」なのか。金利差に基づくドル売り・円買いが悪い円売りに転換する水準を模索しているのだ。

 先週金曜日に円高が107円台に突入したが、その後、NY市場では一時108円台を回復するなど乱高下を繰り返し、けさの東京市場でも108円台での攻防だ。このような短期的に荒い動きは、テクニカルに相場の転換点に見られる特徴でもある。果たしてドル売りクライマックスの前兆なのか。

 有事の円買いは一時的としても、金利差に基づくドル売り、その結果としての円高相場も正念場を迎えているようだ。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経ヴェリタス「逸’s OK!」と日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層心理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

豊島逸夫が語り尽くす 金 為替 世界経済

出版:日経BP社
価格:1026円(税込み)

日経電子版マネー「豊島逸夫の金のつぶやき」でおなじみの筆者による日経マネームック最新刊です。

豊島逸夫の金のつぶやきをMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップマーケットトップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!

豊島逸夫の金のつぶやき 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。