2017年11月18日(土)

パンチ工業のリバースエンジ 文化財も

2017/9/8 6:30
保存
共有
印刷
その他

 金型用部品大手のパンチ工業が、部品をスキャンして復元用の設計データを取るリバースエンジニアリングサービスを始めたのは自動車部品メーカーから強い要望があったためだ。だが、文化財など思わぬ分野から注文が舞い込み、同社も異業種の世界に積極的に飛び込むことにした。

6種類使う3Dスキャナーのうちの1種類

6種類使う3Dスキャナーのうちの1種類

 サービスの要は3次元(3D)スキャナー設備にある。名古屋市の営業拠点を訪れると、カメラやレーザーが付いた高さ1メートル50センチほどのスキャナーがあった。円台に置かれた現物の部品にレーザーを当てながら、スキャナーが静かに形状をとらえていく。ほどなくパソコン画面に立体データがあらわれた。

 同社が使うスキャナーはドイツのGOM製、スウェーデンのヘキサゴン・メトロジー製など6種類ある。対象の大きさや形に応じて使い分け、持ち運べるハンディタイプもある。

 パンチ工業は2017年3月期の連結売上高が366億円で、国内顧客6000社を抱え、ミスミグループ本社に次ぐ業界2位となっている。売り上げの48%を稼ぐ中国は自動車分野を軸に今後も堅調と見込まれているが、43%の日本は生産拠点の海外移転がさらに進むとされ安泰ではない。

 金型メーカーの廃業や再編で設計図面がなくなるリスクがあり、リバースエンジニアリングを求める声が高まっていた。16年10月、自動車部品メーカーなどを対象にサービスを始めた。

 事業を展開するうち、当初対象としていなかった分野からの問い合わせが来るようになった。「文化財です。神社仏閣のふすまの取っ手の金物を測定したいという発注もあった」。営業創造課の遊佐啓介課長は振り返る。文化財は風化の恐れがあるものが多く、後世に残すためにデジタルデータとして保存する必要性が高まっている。

 取り壊しが決まった建物の壁にある彫刻もスキャンした。彫刻の記録を残しておく必要があった。建設会社などこれまで取引のなかった異業種の注文が見込まれる。

 文化財の分野へとサービスの範囲を広げるためのチャンスが、4月に訪れた。学術資料や文化財をデジタルデータで保存・活用する産学連携組織「デジタルアーカイブ推進コンソーシアム」が設立され、パンチ工業は5月に参画した。

 大日本印刷NTTデータ富士フイルム、博報堂など約20社が加わってつくったコンソーシアムはデジタル技術の標準化などテーマごとに委員会を設け、具体例を持ち寄って解決策を探る。パンチ工業にとってデジタル化の知識を広げ、需要の在りかを探ることもできるネットワークだ。

 人間の臓器の模型をスキャンする案件も引き受けた。手術の練習のために模型を量産する必要があった。医療分野からの受注も、リバースエンジニアリングが従来の取引先とは違う業種に顧客が広がっていることを示している。

 同社は鉄板などに穴を空けるパンチや、金型から成型品を取り外すためのエジェクタピンを手掛けてきた。文化財の測定には高い精度が求められ、特注品に強いノウハウは新分野のリバースエンジニアリングでも生きる。1000分の1ミリメートル単位での再現も可能だ。

 リバースエンジニアリングの受注はこれまで300件程度あり、文化財関連はまだ数件。遊佐氏はメーンとなる金型案件で発揮できる強みを語った。「スキャンして得た3D図面をもとに、金型部品の加工まで一貫して引き受けられる」

 IT(情報技術)企業などサービスの先行組との違いだ。サービス開始以降、実際に3D図面の製作と部品加工をセットにした依頼がある。

 一括処理できる点は発注企業にとって貴重なようだ。一般に金型部品は、図面通りにできあがるとは限らないからだ。

 たとえば図面で2.0ミリメートルとなっている部品をつくると実際には1.998ミリになるような誤差が生まれる。このため、リバースエンジニアリングを実施する場合、測定データが1.998ミリでも図面に落とし込むときは2.0ミリにする工夫がいる。パンチ工業には、顧客と相談しながら誤差を想定して図面を製作するノウハウがある。

 価格は部品の形の複雑さ、再現する個数、素材の種類によるが、数千円から80万円で復元まで担えるケースが中心になる見通し。

 対象をとらえる角度に工夫が必要で「他社が同じ機械を使ったとしても、同じ結果が出るとは限らない」。遊佐氏は金型について様々な違いを出せると語る。21年3月期の測定関連事業の売上高目標を4億円と置いているが、さらに拡大する可能性は十分ある。

(企業報道部 近藤彰俊)

[日経産業新聞9月8日付]

今なら有料会員限定記事がすべて読めます!
電子版10日間無料お試しキャンペーンは11月20日まで!

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報