あべのハルカス、ブロックチェーン活用仮想通貨に描く夢

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2017/10/4 6:30
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ITpro

2014年に3月に全面開業した大阪市阿倍野区の「あべのハルカス」で、最大規模の仮想地域通貨実験がスタートした

2014年に3月に全面開業した大阪市阿倍野区の「あべのハルカス」で、最大規模の仮想地域通貨実験がスタートした

高さ日本一の超高層複合ビル「あべのハルカス」(大阪市)で、ブロックチェーン技術を活用した仮想地域通貨「近鉄ハルカスコイン」の運用実験が2017年9月1日に始まった。

対象は約5000人。企業が発行する仮想地域通貨としてはこれまでにない最大規模の野心的な実験だ。

利用者は現金やプラスチックカードを携行することなく、スマートフォン(スマホ)だけでビル内の店舗やレストランなど約200店舗で買い物ができる。ビットコインなどの普及が進む中、使い勝手や安心感を含めて一般消費者の支持を得られるかが仮想通貨の課題。実験期間が終わる約1カ月後に、5000人が下す評価に注目が集まっている。

最大の特徴は財布を出すことなく、スマホだけで決済を完了できる手軽さにある

最大の特徴は財布を出すことなく、スマホだけで決済を完了できる手軽さにある

■スマホのカメラでQRコード読み取るだけ

「意外と簡単なのね。これならママ友にもお勧めしたいわ」。あべのハルカスの近くに住む主婦の絹谷香奈さん(34)は、生後1カ月の乳児を抱えてあべのハルカスを訪れ、地下1階の洋菓子店で初めて近鉄ハルカスコインを使ってみた。

ギフト用に1080円のフルーツチョコをほしい旨を店員に伝えると、店員は備え付けのタブレットを操作して、決済情報にリンクしたQRコードを画面に表示した。絹谷さんは手にしたスマホで専用アプリを立ち上げ、カメラでこのQRコードを読み取る。商品名や金額を確認して、ボタンを押すと支払いが完了した。その間十数秒。

「子どもを抱えたままだと、買い物の度に財布を取り出すのは大変だとちょうど悩んでいたところだった。スマホだけでそれも瞬時に支払いが終わるのは本当にありがたい」。この日まで、仮想通貨やビットコインといった言葉すら知らなかった絹谷さん。現金やプラスチックのクレジットカードを取り出したり、店員とやり取りしたりせずに済む手軽な買い物体験に終始感心した様子だった。

スマホを取り出し、店員が差し出したタブレット画面に表示されたQRコードを読み取るだけで決済が完了する

スマホを取り出し、店員が差し出したタブレット画面に表示されたQRコードを読み取るだけで決済が完了する

実験を統括する近鉄グループホールディングス事業開発部の藤田一人課長(左)とブロックチェーン基盤開発などで実験に協力する三菱総合研究所の奥村拓史主席研究員(右)

実験を統括する近鉄グループホールディングス事業開発部の藤田一人課長(左)とブロックチェーン基盤開発などで実験に協力する三菱総合研究所の奥村拓史主席研究員(右)

近鉄ハルカスコインは仕組みこそブロックチェーンという最先端技術を使っているが、実際の使い方は中国で普及するQRコード決済サービス「支付宝(Alipay)」「微信支付(WeChat Pay)」のそれに近い。買い物客は、支払いのタイミングでスマホを取り出し、QRコードを読み取るだけ。店員にとっての負担も軽く、レジ代わりにタブレットを操作して自動的に現れるQRコードを買い物客に見せるだけでよい。双方とも難しい技術的な仕組みは知らなくても、1回体験すればすぐに覚えられる。

近鉄グループホールディングスがグループとして運営するあべのハルカスで仮想地域通貨の実験を行うのは、今までにない斬新な沿線活性化モデルを作り上げたかったからだ。「これまでは鉄道のインフラを広げることで沿線を発展させてきた。今後は鉄道を利用する住民や勤労者を金融インフラで活性化させたい」。実験を統括する事業開発部の藤田一人課長は狙いをこう明かす。

独自発行の通貨だからこそ実現可能な使い勝手のよい決済手段を提供でき、結果として沿線に住み働き続けるメリットを日々実感してもらえれば「囲い込み」につながるはず――。そう考えたのが実験の原点にある。

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