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決めきれぬ攻撃陣、アルゼンチンなお浮上せず

サッカージャーナリスト 沢田啓明

サッカーの試合では、我々ジャーナリストでも戦前の予想が外れることがしばしばある。見方が間違っていた、と言われればそれまでだが、この世界最高の人気スポーツの魅力のひとつがその意外性にあるのは確かだろう。

まさかの最下位とドロー

過去に2度ワールドカップ(W杯)を制覇し、マラドーナ、メッシら世界サッカー史上に輝くスーパースターを輩出してきた超大国が、来年のW杯出場権がかかる予選終盤のホームゲームで、最下位ですでに予選敗退が決まっており、将来を見据えて若手中心のメンバーで臨んだ国と引き分けるとは全く予想していなかった。

W杯南米予選順位表
国名勝ち点得失差
ブラジル3711+27
ウルグアイ27+10
コロンビア26+3
ペルー24+1
アルゼンチン24+1
チリ23+1
パラグアイ21-6
エクアドル20
ボリビア1311-20
ベネズエラ10-17

9月5日、南米各地でW杯南米予選の第16節が行われた。

南米予選は、参加10カ国がホームアンドアウェー方式で各々18試合を行う。南米からの出場枠は4.5で、ブラジルは首位を独走し、すでにW杯出場を決めている。一方で、強豪アルゼンチンは15節終了時点で5位と低迷。このままだとオセアニア地区1位ニュージーランドとの大陸間プレーオフを戦わなければならない。

今年6月に就任したホルヘ・サンパオリ監督は「高い位置からの強烈なプレス、素早い攻守の切り替え、人数をかけての果敢な攻撃」を基本とする戦術を短期間にたたき込み、7月の強化試合でブラジルを1-0で下した。8月31日のW杯予選第15節のウルグアイ戦(アウェー)でも中盤を支配して主導権を握り、スコアレスドローで勝ち点1を手にしていた。残り3節。サンパオリ監督としては、ホームでベネズエラとペルーに勝ち、アウェーでエクアドルと引き分け以上なら4位以内が確実で、晴れてW杯出場、という胸算用だったはずだ。

迎えたベネズエラ戦。アルゼンチンは多くの決定機をつくりながら、CFイカルディ(インテル・ミラノ)、FWディバラ(ユベントス)らが決め切れない。エースのメッシ(バルセロナ)も、珍しくパスの失敗が多く、ドリブル突破を再三止められ、絶好の位置からのFKを大きく外す。左サイドを突破してチャンスをつくっていたMFディ・マリア(パリ・サンジェルマン)が故障し、わずか25分で退いたのも痛かった。消化不良のまま、前半を0-0で終えた。

後半開始早々、アルゼンチンは冷や水を浴びせかけられる。ベネズエラが中盤でボールを奪うと、素早いカウンター。巧みなスルーパスを通し、21歳のFWムリージョ(カシムパシャ=トルコ)が技ありのシュートをたたき込んだのである。

目が覚めたアルゼンチンは、4分後、左サイドを突破したMFアクーニャ(ラシン)が鋭いクロス。これをゴール前でイカルディが競り合い、相手DFのオウンゴールを誘って追いついた。

監督苦悩、「好機多かったが…」

本来のアルゼンチンであれば、ここから次々と得点を重ねるはず。ところが、メッシが決定的な仕事ができず、途中出場のパストーレ(パリ・サンジェルマン)らがミスを連発。圧倒的に攻めながら、最後まで勝ち越し点を奪えなかった。

その一方で、ベネズエラの健闘も大いにたたえられていい。平均年齢22.5歳の若い選手たちが懸命に走り、時にはメッシを3人、4人がかりで囲むなどして敵の攻撃を阻止すると同時に、危険なカウンターで格上を脅かした。

試合後、アルゼンチンのサンパオリ監督は、「チャンスは多かったが、最後のところでミスが出た」と苦い顔。「残り2試合、W杯出場に必要な勝ち点を絶対にもぎ取る」と宣言する姿には悲壮感が漂っていた。

その他の試合は、ウルグアイがアウェーでパラグアイを下して2位に浮上。コロンビアは、ホームでブラジルと引き分けて3位。アウェーでエクアドルを倒したペルーが4位に躍り出た。以下、アルゼンチン、チリ、パラグアイ、エクアドルが僅差でひしめく混戦となっている。

サンパオリ監督が目指す戦術は明確だ。伸び盛りの若手を抜擢する選手起用も、間違っていない。あとは選手が持ち前の能力を発揮して結果を出すだけ、なのだが、それがうまくいかない。

来月5日、まずホームでペルー戦

試合開始時はコンパクトな布陣なのに、途中から間延びすることがあり、これが攻撃に厚みを欠き、敵のカウンターを浴びる原因となっている。ブラジルのMFパウリーニョ(バルセロナ)のように攻守両面でチームに貢献するタイプの選手が見当たらず、攻撃の意外性が欠けている。大黒柱メッシのプレー内容に波があるのも心配だ。

南米予選の最後の2節は、10月5日と10日に行なわれる。アルゼンチンは、まずホームでペルーに勝つことが絶対条件。他の試合の結果次第では標高2850メートルのキトで地元エクアドルを倒さなければならない、という極めて困難な状況に直面する可能性が出てきた。

サッカーでは、何が起きるかわからない。W杯予選で、大国がまさかの敗退をすることがしばしばある。今回の南米予選は、最後の最後まで全く目が離せなくなった。

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