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バドミントン界のお祭り男、競技普及へ思い熱く

京都市を拠点に活動するバドミントン男子の「トリッキーパンダース」。社会人チームが覇を競う「S/Jリーグ」での初優勝を目指す上でキーマンとなるのが今季主将に就任した米田健司だが、バドミントンの人気向上の取り組みでも先頭に立つ。

母体企業の厚い支援を受ける実業団チームに対し、クラブチームのトリッキーパンダースはそのような後ろ盾を持たない。スポンサーの支援とともに活動の原資となるのが、一般向けレッスンや講習会での指導料。米田は他の選手とともに平日は幼稚園から社会人まで幅広い年代を教え、週末は全国に講習に出向く。

米田はレッスンや講習の合間を縫って練習に精を出す

自分の練習に費やすのは、朝から夜にかけて行われるレッスンの合間の約3時間。指導役との二足のわらじは時間的な制約が大きいはずだが、そこでものをいうのがレッスンで身につけた指導力だ。米田は「足りないことや間違っているところを選手同士で確認しあえる」と、皆が"コーチ兼任"である利点を語る。

S/Jリーグは男女ともにダブルス2試合、シングルス1試合の団体戦方式で実施。1人の選手が一度に単複両方に出ることはできず、5人の選手が必要になる。トリッキーパンダースの所属選手は7人。そのうち2人はけが人が出るなどの不測の事態に備えて予備的に登録しており、通常は試合に出ない。リーグに参戦するレギュラーメンバーは5人と、ぎりぎりの陣容だ。

「どんな人とでも合わせられる」

米田の専門はダブルスで、パートナーは台湾代表のリャオ・ミンチュン。外国人選手を登録できるよう各チームに与えられた補強選手枠を使い、助っ人として参戦してもらっている。前衛の米田は「リーグの中で自分は技術もパワーもない方」と自身に厳しいが、足りないところを補う長所が「パートナーをうまく生かすことと、競った場面でポイントを取る力」。後衛のリャオがいい体勢で強打できるよう、相手に甘い球を打たせる配球が肝と心得る。

リャオが日本に滞在するのは主にS/Jリーグ期間中のみ。チームでは井谷和弥と高階知也がペアを組む頻度が高く、福田春樹はシングルス専門とあって、S/Jリーグのない期間は米田はパートナー不在で過ごすことが多い。現在、リーグ期間外はしばしば再春館製薬所のスパーリング担当スタッフの山田和司と組む。

決まった相手と通年で練習できないのは大きなハンディだが、この点も米田は逆境と捉えていない。山田は自身と同じ前衛タイプで、互いに"我"を出そうものならかみ合わない。そこで「山田さんとやるときはひたすらコート内を回る。自分が後ろに入ってアタックすることもある」と米田。「どんな人とでも合わせられるのも長所かな」と笑う。

新潟・北越高を卒業後、西日本の強豪の近大を経てトリッキーパンダースに入った。大学時代に複数の実業団チームに誘われた際、高校の先輩でトリッキーパンダースにいた桜井勝仁に相談したところ「うちに来いよ」。母体企業がないことにもめげず、地道なレッスン活動で身を立てる真のバドミントン好きが醸す雰囲気が入団の決め手になった。

昨年のリオデジャネイロ五輪。女子ダブルスで高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)が日本バドミントン界初の金メダルを獲得した一戦は、かつてない興奮を胸にテレビ観戦した。奥原希望(同)も女子シングルスで銅メダルを獲得し、リオ五輪は日本がメダル常連国の仲間入りをした記念碑的な大会となった。

リオ五輪で高橋(右)、松友組が女子ダブルスを制した一戦をかつてない興奮を胸にテレビ観戦した

だが、それで一気にバドミントンブームが起きたわけではなかった。日本リーグの名称がS/Jリーグへと変わった昨季は多少の会場演出はあったものの、米田が参戦したことがある強国のインドネシアやマレーシアのプロリーグと比べれば、いかにもおとなしかった。普及に向けたプロモーションも十分とはいえず「せっかく世界で活躍した選手がたくさんいるにもかかわらず、普及につなげられていない」との思いが残った。

PR動画、自身のツイッターで

そこで米田は昨秋、S/Jリーグの人気向上に向けて撮影したPR動画を自身のツイッターで公開した。世界的ブームとなった「アイス・バケツ・チャレンジ」にならって次に動画を公開する人を2~3人指名する方式を採り、日立情報通信エンジニアリングの丸尾亮太郎、トナミ運輸の嘉村健士、現在はシニア大会などで活躍する石橋律子の3人を指名した。

「S/Jリーグ メジャーチャレンジ」と題したプロジェクトの輪は日本代表選手や一般愛好者も巻き込んで拡大。多くの動画が関係者のツイッターやフェイスブックにあふれ、バドミントン界ではちょっとした話題になった。

「ヨネケン」の愛称でバドミントン界に広くその存在が知られる米田のまたの名は「お祭り男」。日本代表経験のない25歳は「これだけの実力でこれだけ知ってもらっている選手は僕くらい」と話すが、競技普及への熱い思いと行動力には誰もが一目置く。

昨季のS/Jリーグでトリッキーパンダースは8チーム中、4位。ただ、日本代表選手がいないチームが近年、境遇の差をものともせずに日本ユニシス、トナミ運輸、NTT東日本と「3強」の一角を次々に破った活躍は高い評価を得た。自身を含め、チームの面々の最大の特長は「ハングリー精神」と自負する米田が目指すのは、2014年度に記録した過去最高の3位を上回る成績。11月に開幕する今季も「各世代のトップ選手を集めたチームに、雑草軍団が対抗する姿を見てほしい」と力強く語る。

(合六謙二)

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