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アマゾン経済圏、ベンチャー育てる

米アマゾン・ドット・コムが2015年から始めたベンチャー支援事業が拡大している。ベンチャー企業の製品をネットで販売するサービスで、参加社数が世界で2100を超えた。支援先企業の製品から全米規模のヒットが出るなど収益面でも成果が出始めている。「販路」と「知名度」を強みに、アマゾンは独自のベンチャー経済圏を形成しつつある。

アンキ社のロボット玩具「コズモ」は昨年の年末商戦のヒット商品となった

このほどアマゾンが「ローンチパッド」と呼ばれるベンチャー支援事業の進捗状況を明らかにした。

主にアマゾンと協力関係にあるベンチャーキャピタルなどから資金支援を受けている新興企業を対象としたサービスで、選ばれた企業は、製品をアマゾンの販路に乗せて売ることができる。ローンチパッド専用のサイトも設けられており、動画で製品内容を紹介することも可能だ。

現在までに対象国は米国、カナダ、インド、ドイツなど7カ国に拡大。日本でも今年1月からサービスが始まっている。扱う製品の数は世界で1万5千を超え、100万ドル(約1億1000万円)を超える売り上げを達成した企業数も85社超に上っている。

ベンチャーキャピタルのように資金支援をするわけではない。ネット通販で世界最大のアマゾンの販路を使うことで「顧客に気づいてもらうことが容易になる」(アマゾン)のが、参加企業にとっての最大の利点だ。

例えば、人工知能(AI)を搭載した手のひらサイズのロボット「COZMO(コズモ)」だ。サンフランシスコに本社を置くベンチャー企業のアンキが、16年10月に売り出したが、その年の12月の最初の週には完売となり、予約を打ち切った。アンキの共同創業者のハンス・タペイナー氏は「他の販路も持っていたが、アマゾン効果が大きかった」と話す。

コズモは16年の年末商戦で8番目に売れた商品となり、新興企業の製品としては異例の人気をみせた。それ以外にも、藻から抽出した油や大豆を原料とした超高カロリーの栄養ドリンク「ソイレント」など、全米規模で名前が知られた製品がアマゾンのローンチパッドから生まれている。

アマゾンは、ローンチパッド事業の収益を明らかにしていない。ただ、ベンチャー企業への投資や訓練にかかわるファンドやアクセラレーター100社以上が、対象企業の選別ですでにアマゾンと協業中だ。ベンチャー支援ビジネスの世界で、アマゾンが一定の存在感を占めていることがうかがえる。

シリコンバレーの老舗アクセラレーターであるYコンビネータの幹部は「新興企業にとっては製品とお客を結びつけることが大きな障壁」と解説する。アマゾンのサービスを活用することで自らが支援するベンチャーの市場開拓が進みやすくなるとの見方だ。

製造業VBにチャンス

古くはグーグルやフェイスブックなど、ソフトウエア企業に注目が集まりがちなベンチャー企業だが、アマゾンのローンチパッドは、製造業などハードウエア企業にとってむしろ追い風になっている。

コズモをつくったアンキのハンス氏は「動画でコズモがどういうものかを説明できるので、消費者の理解が進んだ」と話す。写真や文字だけでは性能が伝わりにくいのがハードウエアだが、アマゾンがこの壁を取り除いてくれている。

注文を受けてからの商流を、アマゾンが一括して請け負ってくれる点も大きい。カメラ付きセンサーを内蔵したオーブンをつくっている米ジューンの幹部は「製品開発に専念すればいいので在庫の心配をしなくて済む」と話す。

注文は委託先の海外工場に送られ、そこで作られた製品がアマゾンを通じて顧客に届くという。

ローンチパッドの展開国が7カ国に広がったことから、グローバルな展開にも結びつきやすい。コズモは9月に日本でも発売される。

競合を駆逐する勢いで知られるアマゾンの販路拡大だが、製造業ベンチャーにとっては渡りに船なのかもしれない。

(シリコンバレー=中西豊紀)

[日経産業新聞 9月5日付]

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