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悩み深きダルビッシュ フォーム改造へ試行錯誤

スポーツライター 丹羽政善

米アリゾナ遠征の最終日。8月31日午前10時半すぎ、ちょうど1カ月前にドジャースにトレードされたダルビッシュ有がフィールドに姿を見せると、キャッチボールの後に右翼ポールの奥にあるブルペンへ消えた。先発2日前ということを除けば、特に不思議ではないが、なんとブルペンに入ったのは3日連続だった。

異例の3日連続ブルペン入り

通常、先発投手がブルペンに入るのは登板の2日後。それから2日休んで先発というのが中4日の場合の一般的なルーティンである。ダルビッシュは今回、28日に試合がなかった関係で中5日で9月2日のパドレス戦に先発した。その場合、ブルペンでの調整が2回になることはあり得るが、やはり3日連続は異例だ。しかもその日、練習の最後にもう一度ブルペンに入っている。

よほど何かがなければというところだが、実際、何かがあるようだ。ダルビッシュは今、ベストなフォームを求めて、試行錯誤の真っただ中なのである。

フォームの見直しに着手したのは、8月半ばのこと。16日の登板で腰に張りを感じたダルビッシュは、無理することはないというチームの方針もあって10日間の故障者リスト(DL)に入ると、その時間を利用した。

「投手コーチから『もうちょっと、こうした方がいいんじゃないか』と提案されて」

そのことにダルビッシュも異論はなかった。ドジャース移籍後、初の登板となった8月4日のメッツ戦では7回を3安打、無失点と好投したが、10日のダイヤモンドバックス戦では5回を投げて5安打、2失点。16日のホワイトソックス戦では腰の影響もあったようだが、6回を投げて8安打、3失点と内容がいまひとつ。まだプレーオフまで間がある今なら、という時間的な余裕もシーズン途中の大胆なフォーム改造を後押ししたか。

DLが明けた27日、ブルワーズ戦に先発したダルビッシュのフォームは見た目にも激変。本人もそれを認めている。

「DLに入っている10日間ですごく大きな変更というか、メカニックの部分ですごく(変更)した」

その日の登板では5回を投げて6安打、3失点とまだ不安定だったが、時間がかかるのは覚悟の上。現状を「スプリングトレーニングの最初の感覚」と形容し、続けた。「一個一個、いいところを残しつつ、悪いところを消していくという作業になっていくと思います」

実際、31日のブルペンでも投げるたびにリック・ハニーカット投手コーチが、身ぶり手ぶりを交えてダルビッシュに指導するほどだった。

昨年の今ごろもフォームにメス

そういえばちょうど昨年の今ごろも、ダルビッシュはフォームにメスを入れていた。2016年8月下旬、「スライダーが曲がらない」と首をひねり、翌9月に入ってから腕を下げ、さらにインステップ気味だったのを修正し、スライダーのキレを取り戻した。もっとも、本当の試行錯誤はそこから始まっている。9月14日、本来はヒューストンで先発予定だったが、疲れもたまっていたことから17日に変更となった。代わりにその日、ブルペンに入ったダルビッシュはこう漏らしている。

「すごいよかった」。数日後、さらにこう表現した。「人生で一番」

ところが、17日の登板では初回に先頭打者本塁打を許すなど、5回を投げて7安打、7失点。8三振を奪ったが、3連続を含む4四球と制球も乱れた。試合後、皮肉にも14日のブルペンでの感覚がよかったことがその結果を招いたと本人が示唆している。

「前回のブルペン(での感覚)がよすぎたって言いましたけれど、そのブルペンは、これまで自分が投げている感じとはかなり違う感じで、そういう感じであまり投げたことがないから、大丈夫かなっていうのがあった」

そのとき、ヒューストンでの感覚は「あまり試合には向いてない。だからもうやらない」と話したが、今まで投げたことのない感覚に触れた代償は小さくなく、本人の言葉を借りればその後、「キャッチボールもぐちゃぐちゃ」。ブルペンに入れば「(ダグ・)ブロケール(投手コーチ)を不機嫌にさせるぐらいストライクが入らなかった」そうだ。それでもなんとか適応し、シーズン最後の2回の登板では好投したわけだが、肝心のプレーオフでは4本のホームランを許し期待に応えられなかった。結局、形にはなったが、付け焼き刃にすぎない面があったのかもしれない。

昨年以上のモデルチェンジ狙う

今回に関しては、昨年以上のモデルチェンジを図っている。

「トミー・ジョン(靱帯修復手術)が終わってから、たぶん肘のことを気にしながら投げている部分があった。もともと横振りの投げ方をするんですけれど、それがかなり縦振りになっていたので、スライダーが思うようにいかないことがたまにあった。基本的に変化球を元のクオリティーに戻すということで、今はかなり(体の使い方を)横振りにしています」

無意識についてしまった癖をどう直していくか。横振りはオーバーかもしれないが、それぐらいリリースポイントに変化をつけなければ修正できないと感じているようだ。もちろん、それは容易ではない。8月27日の試合では制球に苦しだ。

「最初の3イニング(27日のブルワーズ戦)は足を上げたら、体がどんどん前にいって結局、前での腕のスペースがなくて抜けるか、引っかけるかの状態になっていた」

四回以降、足を上げるタイミングを変えて適応したが、全体を振り返って「いい球もあったり、悪い球もあったり、ビックリするような球も。悪い意味でね。まだ思うようにいっていない部分もある」とダルビッシュ。「カットボールとかツーシームはまだ変な感じ、リリースが合わない感じがある。いい球がいっていても自分の感覚が合わない」とも口にした。

ただ、もう迷いはない。

「これをやっていくのは自分の中では決めている」

そうして模索を重ねて迎えた9月2日のパドレス戦。

3回0/3を投げて8安打、5失点と、結果だけを切り取ればメジャー移籍後、最短降板となった。しかし、意外にも本人は前に進んだ手応えを得たような口ぶりだった。

「もちろん、1日でパッとよくなればいいなと思いますけれど、そういうものではないとも思いますし、きょうに関しては前回ほど落ち込んでいないというか、前回のほうが悪かったので、ちょっと明るい気持ちにはなっています」

難しいことに挑戦しているのは承知の上なのだ。

「投げる中でも、意識しなきゃいけないポイントが多すぎる。やっぱりそれを(全部)押さえるっていうのが難しいので、一個一個、練習の中で意識しなくてもいいように潰していく。で、自分が試合の中で意識するポイントを少なくすることをやっている」

ダルビッシュは今、目先の結果よりもっと先を見据えての修正に取り組んでいる。

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