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もっと関西 劇団マレビトの会、城崎で滞在制作(カルチャー)
震災後の福島 「今」を描く

2017/9/1 17:00
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 劇作家・演出家の松田正隆が代表を務める演劇集団「マレビトの会」(拠点・東京)が8月9日から6日間、城崎温泉(兵庫県豊岡市)で演劇「福島を上演する」を滞在制作した。福島県内で取材してフィクションを交えて戯曲にし、10月に上演する。演劇作品として福島の現在を伝えるとともに、福島と観客のいる場所の境目を示す狙いがある。

マレビトの会の「エブリデイ・エブリナイト」の稽古の模様=城崎国際アートセンター提供、igaki photo studio撮影

マレビトの会の「エブリデイ・エブリナイト」の稽古の模様=城崎国際アートセンター提供、igaki photo studio撮影

 「福島を上演する」は昨年から「マレビトの会」が取り組んでいる企画。昨年は、松田ら劇作家5人が福島市内に出向き、戯曲21本を作って上演した。今年は取材地域を福島県内に広げ、松田ら劇作家8人が短編を含めて計29本を書き下ろし、舞台で上演する。

 稽古場所には今年、城崎温泉にある滞在制作施設「城崎国際アートセンター」を選んだ。ここで松田が執筆した「エブリデイ・エブリナイト」と、「アクアマリンふくしま『サンゴ礁の海』にて」の2作を練り上げ、滞在期間中に公開稽古も行った。

 「エブリデイ・エブリナイト」は福島県いわき市近郊の町が舞台。女性シナリオライターの家に、東京で働く女友達の画家が「しばらく、やっかいになります」とやってくる。そこに、ヒッチハイクで旅行中の男2人や不登校らしい双子の姉弟が現れてさざ波を立てる。一方、隣家の独り暮らしの女性は幸せをつかみ心を和ませる。

劇作家の松田正隆

劇作家の松田正隆

 松田は今回の企画「福島を上演する」に取り組んだ理由を、「福島の現在を私たちなりの方法で捉えるのは重要だと思っている。作品を作ることにより、見えてくることがあるはず」と言う。

 「エブリデイ・エブリナイト」については、「空き家の話を書こうと思った。県外から来た人と地元の人が関係を持つ話はドラマになりうると感じた」と話す。福島県の「浜通り」と呼ばれる太平洋沿岸部は、住民が避難したままの空き家が依然多く、イノシシや野生化した動物が出没している状況が創作の動機になったようだ。

 演出するに当たって、俳優たちには「もう少し平板に」と指示し、セリフやしぐさに気持ちを込め過ぎるのをいさめた。松田はその意図を「俳優は劇場という現実の場所と、戯曲に描かれる虚構の場所の2つに立つ。私はその2つの境目を見せることが、演劇の面白いところだと思っている。俳優が気持ちを入れすぎると、観客に境目が分かりづらくなる」と話す。

 そして、松田にとって境目とは、福島と本番の上演場所との関係性も意味しているらしい。

 本番の舞台は、公開稽古と同様に舞台セットを組まず、俳優は特段、舞台衣装を着けないで上演するという。「俳優の身体とセリフで劇を立ち上げたい」との考えからだ。

 稽古したもう1作「アクアマリンふくしま『サンゴ礁の海』にて」は、水族館を訪れた人たちが巨大水槽の前を通り過ぎていく模様を演劇にした。セリフはなく、演劇版のスケッチで、震災の影響から完全に離れられない中での日常を描こうとしたとみられる。

 公演は10月7~15日、小劇場「シアターグリーン」(東京・豊島)で昼と夜の部計12回を予定する。各回は複数の作品を組み合わせるなどして、毎回違った戯曲を舞台にかける。そして全12回で29の戯曲を全て披露する。

(編集委員 小橋弘之)

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