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0歳から手話学ぼう 大阪府、聴覚障害児サポート
専門家「取り組み 広げて」

2017/8/31 14:15
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大阪府が自治体としては全国で初めて乳幼児向けの手話教室を開いている。聴覚障害者にとって「母語」となる手話を幼少期から習うことで、思考力の発達にも良い影響が期待できるとされ、各地では近年、手話の普及を図る条例制定も広がっている。専門家は「大阪の取り組みを全国に広げるべきだ」と話している。

手話を交えた手遊びをする親子ら(大阪市中央区)

手話を交えた手遊びをする親子ら(大阪市中央区)

子供たちが夢中で見つめる絵本の横で、女性が手話で物語の内容を表現する。少し遅れて別の女性が「くまごろうさんのうちには、お客さん毎日たくさんやってきます」と日本語に置き換える。子供たちはクマの家に次々と動物が訪れる話に引き込まれ、笑顔を見せながら見よう見まねで手を動かした。

8月上旬、大阪市内で開かれた聴覚障害のある乳幼児を対象とした手話教室「こめっこ」。0~10歳までの聴覚障害のある子供やその兄弟姉妹、保護者40人以上が参加した。6月から府が大阪聴力障害者協会(大阪市)と連携し、毎月2回開いている。

手話は聴覚障害者の「母語」となるが、独自の文法があり、家族が手話を使えない場合、自然に習得することは難しい。教室では絵本や手遊びを通して手の動かし方を学び、手話の習得に役立ててもらう。

聴覚に障害を持つ2人の娘と参加した堺市東区の主婦、源理恵さん(40)は「こんなに表情豊かに、楽しそうに手話を教えてくれる場所は初めて。娘も喜んでいる」と笑顔をみせた。

保護者同士の交流会もあり、聴覚障害の子供と耳の聞こえる兄弟姉妹とのコミュニケーション方法や、家族全員で手話をすべきかどうかなど、悩み事も共有できる。

府は今年3月、手話を言語として認識してもらい、学びの機会を広げるとの理念を定めた手話言語条例を制定した。全国では鳥取県で2013年に初めて成立し、全日本ろうあ連盟(東京)によると、これまでに101の自治体が同様の条例を作っている。

鳥取県は手話の若い世代への普及を目的に、手話を使った演劇やダンスなどで表現力や正確さを競う「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」を14年から毎年開催。政令市で初めて同条例を制定した神戸市は、ホームページに手話を学べる市民向けの動画を掲載しているが、大阪府の担当者は「乳幼児を対象とした取り組みは他の自治体では聞かない。先進的な取り組み」と胸を張る。

府条例の制定に関わった神戸大の河崎佳子教授(臨床心理学)は「手話を幼少期にきちんと学ばなければ思考力の発達に支障が出る可能性もあり、手話の学習は日本語習得のためにも重要。府と同様の取り組みを全国に広げてもらいたい」と話す。

■「口話」優先で手話普及遅れ 学習指導要領、言及なく
 厚生労働省の調査(2006年)によると、国内の聴覚障害者の数は約35万人。約8割は補聴器や人工内耳を取り付けてコミュニケーションを取る一方で、手話を使う人は6万4千人にとどまる。人工内耳などを付けても完全に音が聞こえるわけではなく、手話ができれば生活改善の助けになる人は多いとみられる。
 手話が普及してこなかった背景には教育現場の遅れがある。1880年の聴覚障害教育国際会議では、相手の口の動きを見て意味を理解し、自らも声を出す「口話」を聴覚障害者に教える決議が採択された。同決議は2010年に撤廃されたが、その間、教育現場では国際的に口話による指導が優先されてきた。
 国の学習指導要領でも、視覚障害のある児童への点字指導については定めがある一方、手話についての言及はない。手話と日本語の文法は異なるため、手話を先に勉強すると日本語の習得に問題が生じかねないとの考えが根強かったことも影響した。
 最近では、手話を早くから使うことが日本語の習得にも役立つとする実証研究が進んでいる。子供の頃からコミュニケーション能力を養えるため、社会性を獲得するうえでも良い効果が期待できるという。

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