2017年11月20日(月)

「最悪の貿易協定」NAFTA再交渉で恩恵あり

The Economist
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2017/9/1 6:30
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The Economist

 トランプ米大統領が「史上最悪の貿易協定」と呼ぶ北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉が始まった。米国が求める貿易赤字の縮小を実現するのは無理筋だ。だが交渉次第では、統合エネルギー市場の誕生など全加盟国が恩恵を得られる成果も期待できる。

 1994年当時、米国経済は戦後最長となる景気拡大局面(米国の景気循環の中で最長の拡大期を記録したのは1991年3月から2001年3月の約120カ月)に入ってようやく3年がたったところだった。

 原油の生産量はそれまでの40年間で最も低い水準に落ち込んでいた。スティーブ・ジョブズ氏がまだ戻っていない米アップルの株式は1ドルちょっとで買うことができた。インターネットの利用が急拡大していることに気付いたジェフ・ベゾス氏がヘッジファンドの仕事を辞め、新しいタイプの小売業を立ち上げたのも94年だった。

 NAFTAはこの年の元日に発効した。これに加盟した米国、カナダ、メキシコは、この後10年で輸出入品に対する関税の大半を撤廃すると誓った。

■大統領支持した州が貿易依存

 この協定は当初から物議を醸した。その後、貿易量と投資額を大幅に増大させているにもかかわらず、批判は高まる一方だ。ドナルド・トランプ氏は米大統領に選ばれる数週間前、NAFTAを「おそらく史上最悪の貿易協定」と呼び、これを撤廃すると発言した。

 だが、米大統領となったトランプ氏は今年の4月に態度を軟化させた。大統領選で自分に投票した州の多くがメキシコおよびカナダとの貿易に大きく依存していることを認識して考えを変えたのかもしれない。

 8月16日、NAFTAの再交渉をすべく、加盟3カ国の通商代表が米ワシントンに集まった。どのような経緯があったにせよ、こうした交渉の場はチャンスだ。90年代はじめに合意した協定は、その後大きく様変わりした経済状況にはそぐわない。トランプ氏が、NAFTAを撤廃するどころか、さらに自由な協定にする可能性も否めない。

 だが、それを実現させるには、加盟各国がみずからこだわる項目に関し譲歩する必要がある。

 アップグレードしたNAFTAは、カナダとメキシコに対する米国の貿易赤字を縮小させるものでなければならない、というトランプ氏の要求は意味をなさない。その理由は、カナダとメキシコに多くを要求しすぎているからだけではない。

 米国の貿易収支は、最終的には米国による投資と貯蓄によって決まるからだ(※)。たとえNAFTAの協定内容に手を加えることで対カナダおよび対メキシコの貿易赤字が減ったとしても、米国がもっと貯蓄を増やさなければその他の国との間で貿易赤字が増えるだけだ。

※=マクロ経済学における投資・貯蓄(IS)バランスの考え方に基づく。一国の貿易収支は、貯蓄と投資の差額と財政収支の和に一致する。投資が貯蓄を上回る分、貿易赤字になる

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