バス停で待ち時間なし スマホで運行位置確認
ソフト開発のユニリタの子会社、ユニ・トランド(東京・港、高野元社長)は地方自治体が運行する路線バス向けに、スマートフォン(スマホ)でバスの現在位置の確認や乗車予約ができるサービスを提供する。クラウド型で初期費用が50万円と低価格で導入できるのが特徴。北海道夕張市のスクールバスで7月に試験運用を始めており、9月から本格運用する。

新しい「デマンドバス予約・位置情報通知クラウドシステム」では、利用者はスマホなどを使って専用の予約サイトで、どの時間、どの路線のバスに乗車するか選択する。サイトでは地図上でバスが現在どの場所を運行しているか分かる。
路線バスは、渋滞や悪天候による遅延が珍しくないため、バスの利用者は屋外で長時間待たされることがある。スマホの画面を見ていれば、バスが近くまで来ているかどうか分かるので、停留所で長時間待たなくても乗ることができる。
バスの運転手はタブレット(多機能端末)を携帯し、利用者を乗せる場所や予約人数などを確認しながらバスを運行する。バスの位置情報の把握もタブレットの全地球測位システム(GPS)機能を使うので、バスにGPS装置を取り付ける必要がなく、低コストでの導入が可能だ。価格は初期導入費用が50万円、運用費が年間30万円。
専用の路線バスの位置情報システムを導入するには、サーバーやシステム開発などに通常100万円以上の初期投資がかかるうえに、システムの保守メンテナンスや通信回線の利用料などの費用も発生する。ユニ・トランドは市販のスマホやタブレットを利用するので、特別な工事やシステム開発が不要なうえ、タブレットが故障した場合は予備のタブレットに交換するだけなのでメンテナンスも容易だ。
バスを運行する自治体は、予約人数に合わせて車両の大きさや運行本数を柔軟に変えることができる。財政が厳しい地方自治体は効率的な路線バス運行ができるため、ニーズがあるとみている。
今回のサービスを導入した夕張市は、民間会社が採算悪化を理由に路線バスから撤退し、市がスクールバスを運営している。従来も事前の届け出による予約制を採用していたが、生徒や迎えに来た保護者が寒い中で長時間待つことが多かった。
財政破綻した夕張市にとって、利用者の数に見合わない大きさのバスを毎日走らせることが大きな負担となっていたという。そこでユニ・トランドが、市の意見を参考に今回の低コストのサービスを開発した。
地方では財政悪化や少子高齢化による利用者の減少で、バス路線の維持が難しくなっている。高齢者や中高生が移動手段として使うことが多いバス路線網の維持が課題となるなか、ユニ・トランドは運行の効率化につながるとして、採用を働きかけ、2~3年で1億円の売り上げを目指す。
(企業報道部 中島募)
[日経産業新聞8月30日付]