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父の指導はスパルタ式 パラスノーボード・成田緑夢(中)

成田緑夢がスノーボードを始めたのは1歳の時。父の隆史が兄姉にスノボを教えており、その流れで一緒に練習することになった。

指導はスパルタ式。兄の童夢らをあまり学校に行かせない極端なやり方は、世間のやり玉にもあがった。童夢によると、すでにスポンサーがついており「結果を出さないといけないから普通の練習じゃダメと、四六時中父がみっちり教えるようになった」。拳も飛んだ。童夢は「今なら虐待と言われるかも。やるからにはとことんやるという父の性格ですね」と説明する。

スノーボードは1歳から。2月の日本選手権で連覇

童夢より9歳年下の緑夢に、そんなことは知るよしもなし。「その世界に生まれていたので、正直あまりわからなかった」と緑夢。ただ、物心ついてからの願いは「普通の小学生になりたい」だった。オフシーズンでもウエークボードをしたり、家の屋上に設置したトランポリンをしたりで、練習漬けの日々。友達と遊ぶこともほとんどない。

だが小学校6年の時、父の指導に反発した兄姉が相次いで家を出たことでそんな日常が突然、終わりを告げる。「自然消滅のように」スノボから離れ、ヒマをもてあましていると見た母のすすめで家の近くのトランポリン教室に通った。「半年ほどしたら楽しくなり、ちょっとやろうかなと」。中2で初出場した全日本選手権で43位、翌年は22位に。すると「どうせやるなら五輪を目指せよ、と父が口を出し始めた」。

再び隆史の指導を仰ぐ。高校にもスポーツ推薦で入った。「中学の間に外の世界を知ったが、またオリに囲まれた。そこからは父がオフのボタンを押さないので、ずっとオリの中だった」と緑夢。

全ての競技に通じるコツつかむ

隆史の指導法は独特だ。2人の師弟関係を間近で見ていた友人で飲食店経営の斉藤健一郎によれば、隆史には「世の中の固定概念、常識が全くない」。例えば野球を教えるなら、基本のキャッチボールからではなく、いきなり150キロの球を打つことから始めるような方法だ。

そして「とりあえず練習の数をやれ。数をやったら君たちは何かを得るんだ、というのが父のやり方だった」(緑夢)。スノボにせよトランポリンにせよ、そうした長年の反復練習で緑夢が身につけたのは、スポーツの動きを貫く「大きなものはみんな一緒」という考え方だ。

要は地面から受ける地球の圧力を感じ、効率的に運動エネルギーに変換すること。その感覚がわかれば、すべてのスポーツに応用できる。実際、緑夢は高校生になってウエークボードを再開、アマのランク日本一になった。また、久しぶりにスノーボードで滑れば、バンクーバー五輪で金メダルのショーン・ホワイト(米国)が披露した2回宙返りの荒技「ダブルマックツイスト」を決められた。驚異の運動能力と言える。

物理学で、様々な力の作用を説明できる考え方を「統一理論」と言う。スポーツにおいて、そんな統一した感覚を緑夢は体得しつつあった。(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊8月29日掲載〕

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