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池田、上井ら…後半戦初戦で得たそれぞれの収穫

編集委員 吉良幸雄

ずいぶん久しく見なかった「レトロ」な光景だった。連日30度を超え、真夏の太陽が照りつけた男子ツアーのRIZAP・KBCオーガスタ(8月24~27日、福岡・芥屋GC=7151ヤード、パー72)で今季初勝利を挙げた池田勇太(31)は優勝後の記者会見で、喉を潤す飲み物としてミネラルウオーターやスポーツドリンクではなく、生ビールをリクエスト。ジョッキを手に「暑い~」と笑いながら、豪快に飲み干した。尾崎将司や青木功、飯合肇ら「昭和のプロ」の系譜を継ぐ池田らしい。

海外メジャーはすべて予選落ち。池田勇太は今季初勝利からの巻き返しを誓った=共同

「西部警察」テーマ曲で乗った

今大会はトーナメント主催者が趣向を凝らし、入場者(決勝ラウンド当日券5500円)はカレーや焼きそば、鶏の炭火焼き、かき氷などが食べ放題で、ギャラリーバス利用者はビール飲み放題も。18番グリーン付近には終日軽快な音楽が鳴り響き、スタートのティーインググラウンドでは、選手のお気に入りの音楽が流された。まるで海水浴場か夏祭りのような雰囲気。池田はかつての人気テレビドラマ「西部警察」のテーマソングに乗ってティーショット。「あの曲で、きょうはいける、と思えるよね」。初日10位から3位、首位タイと尻上がりに調子を上げ、最終日はボギーなしの5バーディー、67をマーク。通算18アンダー、270として同組で回った上井邦裕(34)とのマッチレースを制した。

留飲を下げる勝利の美酒だ。賞金王として臨んだ今季。海外での活躍を一番の目標に掲げながらマスターズ・トーナメントをはじめ海外のメジャー4大会はすべて予選落ちした。松山英樹が全米オープン、全米プロで優勝を争い、谷原秀人や小平智、宮里優作も1試合は決勝ラウンドに進んでいるのに……。勝ち気な池田だけに、賞金王のプライドを傷つけられ、はらわたが煮えくりかえるような悔しさを味わったはず。海外メジャーの敵は日本ツアーで晴らすと、「結果」を出すことを渇望していた。だからこそ、今季初Vで、ようやくスタート台に立ったと思えた。「さあ、これから、見てろよ!」と息巻いた。

2年ぶり3度目の"オーガスタ"制覇は、尾崎将の4勝に次ぎ、青木と並んだ。2009年日本プロでのツアー初優勝以来、9年連続で勝利を積み重ねているが、これは尾崎将の15年(1986~2000年)、青木、片山晋呉の11年、杉原輝雄の10年に次ぎ、尾崎直道、倉本昌弘、鈴木規夫と並んでツアー歴代5位だ。シーズンオフだけでなくシーズン中も博多のジムに通い、筋力トレーニングを行っている池田にとって、福岡は「準地元」といっていい。海外で戦うためには飛距離アップが必要と、一昨年から筋トレに取り組み始めた。着実に成果は表れ、今季のドライビングディスタンスはランク6位の300.21ヤードと飛距離が伸びている。

男子ツアーは、この大会から日本シリーズまで15連戦。「年間複数回優勝するのは、周りから当たり前だと思われているし、自分でも当たり前と思っている」。来年、マスターズなどでリベンジするには、年末時点で世界ランク50位以内に入らなければならないが、今回の勝利で前週の71位から63位に浮上した。「ここから一気に頂点にいきます」と、2年連続賞金王獲得をぶち上げた。手応えは? と聞かれると、間髪をおかず「ハイ」。思い入れの強い福岡で優勝、絶好の再スタートを切り、自信を膨らませた。

「ドライバーイップス」から復調

一方、池田に敗れた上井も、シード返り咲きへ大きく前進した。7年連続で維持した賞金シードから陥落したのは2年前。11試合連続予選落ち・棄権もあり、69位から98位にランクダウンした。大スランプの原因は「ドライバーイップス」。左へのチーピンを連発、それを怖がると大きく右へ曲げた。ツアー出場権をかけた予選会も振るわず昨季は9試合に出ただけ。今回は主催者推薦出場で、4戦目だった。悲願のツアー初勝利は逃したが「ドライバーイップス」からは立ち直った。一緒に練習ラウンドを行った岩田寛や、第3ラウンドで同組だった「チーム芹沢」の先輩・藤田寛之、高山忠洋らも上井の復調を認めている。

上井邦裕は初優勝を逃したもののシード返り咲きに大きく前進した=共同

同じ8番ホールで初日、3日目にホールインワンを記録した10年大会では、最終日を首位スタートしながら1、2番で連続ボギーをたたき5位に敗れている。今回は1、3番でバーディーを奪い、13番時点では池田と並んでいた。悔やまれるのは14番(パー4)。右ラフからの第2打のアプローチが8メートルもオーバー。「中途半端で、あれが良くなかった」。最初のパットは2.5メートルショート。パーパットも外し、手痛い3パットボギーで1打差に後退した。

初優勝はしたいが、シード復活には順位を落とすわけにもいかない。プレッシャーもあり、戦い方が難しかっただろう。18番(パー5)ではティーショットを右マウンドの深いラフに打ち込み、万事休す。「逃げずにやれることはやった。それなりに楽しく回れた」と振り返ったが、目にはうっすら悔し涙がにじんだ。それでも賞金1000万円を得てランク32位(1289万円)に。シード復帰は射程内だ。

予選ラウンド首位の大堀裕次郎は自己ベストの3位に入った=共同

賞金ランク2位でチャン・キム(米国)を追う、宮里優作(37)は、決勝ラウンドで65、68と追い上げ4位と、まず順調に後半戦を滑り出した。多忙な身だが、ツアーが夏休みだった最近3週間は、仙台、札幌の試合に参加。「家族も一緒で、リフレッシュできた」という。11位タイだったC・キムと568万円差に詰め「悪くてもベスト10に入っておかないといけない。数多く優勝争いすることが大事」。ただ今回は優勝争いとはちょっと遠く「(60位だった)初日はいい位置にいけないと改めて感じた」と反省点を口にする。また選手会長の立場で、18番などで流れた音楽について「8割くらいの選手から、気持ちよく、いいんじゃない、という意見をもらった。来年以降も続けて、この芥屋は"夏フェス(ティバル)"的な感じでいきたいと思う」と話した。

最終日最終組で踏ん張る

優勝争いには、30代だけでなく期待の20代も加わった。プロデビュー4年目の大堀裕次郎(25)は予選ラウンドを首位ターン。池田、上井と最終組で回った最終日は、順位を落とさず自己ベストの3位で終えた。残念だったのは大の阪神ファンが「六甲おろし」で気分を高揚させて打った1番(パー4)のティーショットを右に曲げてボギーとつまずいたこと。後半のインで3打伸ばしたが、"猛虎逆襲"とはならず、初優勝を逃した。

ただ「スイング、メンタル面で自信になった。(後半戦の)これからも頑張りたい」。決勝ラウンドを同組で回った池田のプレーを見て、ショートゲームの大切さを痛感したという。松山、石川遼と同学年で、13年には日本アマも制しているが、池田には「ゴルフがまだ若い(青い)」と見下ろされた。経験を重ね、たくましくなってもらいたいものだ。同じことは、2日目に2位につけた24歳の出水田(いずみだ)大二郎にもいえる。大堀は182センチ、出水田は183センチと、ともに大型で、まだまだ伸びしろはある。今後のプレーに注目だ。

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