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熱戦へ向けた暑さ対策に熱視線(IN FOCUS)
サーモグラフィーで見たあの手この手

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2017/8/30 7:00
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東日本の記録的な長雨が終わり、夏らしい暑さが戻ってきた。総務省消防庁によると、全国の熱中症救急搬送者数は4万9000人を超え(5月1日から8月27日、速報値)昨年を上回る。2020年東京五輪・パラリンピック開催を控えて産学官が進める暑さ対策を、温度の違いを色で表すサーモグラフィーでとらえた。

■赤外線をはね返す

照り返しの厳しい道路に薄い灰色の路面が見える。路面温度上昇の原因となる太陽からの赤外線を反射する遮熱性舗装だ。サーモグラフィー(写真上)では、通常の舗装は高温(約46度)で赤く、遮熱性舗装は低温(約38度)のため青く表示される。水の気化熱で温度を下げる保水材を用いた舗装と併せ、競技会場周辺やマラソンコースに施される。都道では全長136キロを予定、国道や区道でも施工が続く。

国はこれまで都市規模のヒートアイランド対策を講じてきた。近年の熱中症増加を懸念し、街なかで局所的にでも体感温度を下げる工夫を勧め、適応策も打ち出している。

■エコな救護所

水でぬれた不織布(約26度)を垂らす(埼玉県宮代町)

技術メーカーなどで構成する研究会「涼まち研」は、電気を使わず水を利用して涼を得る救護所を考案した。スポーツイベントで試験的に設置し、効果を検証している。研究会のメンバーで日本工業大学の三坂育正教授は「五輪をきっかけに、打ち水や植物の応用といった日本独自の工夫をする文化が根付いてほしい」とレガシー(遺産)となることに期待を寄せる。

■服もクールに

冷却下着を身につける(約30度)現場作業者(都内)

人の体を直接冷やす衣料品が、建設業や警備など屋外で長時間業務を行う現場に広がっている。帝国繊維は宇宙航空研究開発機構(JAXA)、日本ユニフォームセンターと共同で、水冷パイプをはわせた冷却下着を開発、製品化した。大手建設会社が40着を導入、「夏場でも快適に作業ができ、効率が上がった」と現場の管理者は話す。競技施設の建設作業での利用も見込まれる。

あらゆるものがネットにつながるIoTを活用した対策も進む。現場作業者が腕時計型のセンサーを装着し、人の動作や脈拍と周囲の温湿度といった情報を解析することで、熱中症の兆候を個別に察知。労務管理者が適切に休憩の指示を出せるよう支援するシステムを、富士通などが開発している。

■求められる医療体制

救護所で体を冷やして休息をとる熱中症患者(静岡県小山町)

熱中症にかかったときの対処も重要になる。会場が集まる東京都江東区の江東病院で救急医療に携わる副院長の三浦邦久医師は「大会運営側と医療機関の連携を早く進めて、開催前年には体制を整えなければならない」と訴える。競技会場と救護所や病院を結ぶ動線の確保はもちろん、医師不足が慢性化する中、人的資源をどう割り振るかも問われる。

東京五輪・パラリンピック組織委員会は、国や自治体と暑さ対策で手を取り始めたばかり。テロ対策の観点から、単純にテントを多く張って日陰を増やす方法には限界がある。金をかける力業に頼らず、炎天下の大会にどう備えるかが注目される。

(写真部 寺沢将幸)

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