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日本列島誕生の謎に新理論「日本海溝移動説」

2017/8/26 6:30
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 東日本大震災をもたらしたマグニチュード9の東北地方太平洋沖地震は日本海溝付近で起き、周辺の深海底や東日本の太平洋沿岸域が変動した。ただ、長い時間スケールでみれば日本海溝そのものは不動の存在だと多くの研究者は漠然と考えてきた。

 ところが最近、日本海溝は西方に、つまり日本列島の方に年間1cm程度のペースでゆっくり動いているとする「日本海溝移動説」が提唱された。提唱者は産業技術総合研究所地質調査総合センター研究主幹の高橋雅紀博士だ。

■日本海溝の西方への移動で、東日本の険しい山脈が形成

東日本の海底地形図。下北半島沖から房総半島沖まで南北に走る濃い青色の場所が日本海溝。画像提供は海洋台帳(海上保安庁)

東日本の海底地形図。下北半島沖から房総半島沖まで南北に走る濃い青色の場所が日本海溝。画像提供は海洋台帳(海上保安庁)

 日本海溝は東北地方の東方沖を南北に走る長さ約800km、最深部の深さ8000mに達する世界有数の海溝だ。太平洋の海底を構成する太平洋プレートは日本海溝から、東日本が乗る陸側プレートの下に沈み込んでいる。つまり日本海溝は陸側プレートの東縁であり、同海溝が西方に移動すると、東日本には大地を圧縮する力が働く。東日本が約300万年前から隆起し始め、奥羽山脈など険しい山脈が形成されたのは、「日本海溝の西方移動による」と高橋博士は主張する。

 ではなぜ日本海溝は西方に移動しているのか?

 日本海溝には太平洋プレートが沈み込んでいるので、同プレートが日本海溝を西へと押していると考えるのが自然だ。しかし、300万年前に東日本の隆起が始まった前後の時期に、太平洋プレートの動きは変化していないので、同プレートが原因とは考えにくい。

■日本海溝を押しているのは、南にあるフィリピン海プレート

 高橋博士によれば、日本海溝を押しているのは太平洋プレートではなく、その南にあるフィリピン海プレートだ。フィリピン海プレートは日本海溝の南西にある相模トラフから、関東地方が乗る陸側プレートの下に沈み込んでいる。300万年前、フィリピン海プレートの移動方向が変わり、関東地方の地下深部で、沈み込んだ同プレートが陸側プレートの底部を西方に押すようになったと高橋博士は考えている。

 ただフィリピン海プレートが300万年前に移動方向を変えたことを示す直接的な証拠はない。「そもそもフィリピン海プレートがどんな動きをしていたのかよくわかっていない。太平洋プレートと違って、プレートの過去の動きを探る手がかりが乏しいからだ」(高橋博士)

 また日本海溝の西方移動を示す直接的な証拠もない。日本海溝は深海底にあり、陸域のように全地球測位システム(GPS)でその移動を計測することは難しいからだ。

 もっとも今回の新説の提唱を契機に、フィリピン海プレートの過去の動きを調べる研究が活発化し、300万年前の方向転換が検証される可能性はある。さらに今後、日本海溝付近の海底を含めて地殻変動の観測網が拡充され、より長期かつ広域の地表の動きがわかれば、海溝移動に関連する動きが見えてくるかもしれない。

(詳細は25日発売の日経サイエンス2017年10月号に掲載)

日経サイエンス 2017年10月号

著者 :
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,440円 (税込み)


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