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世界めざし生産改革 ベンチャー企業がIT活用

よくわかる 国産ファッション(2)

NIKKEI STYLE

国内では長く10兆円程度で横ばいが続く衣料品市場。一方、世界に目を向けると年6%程度の成長が続く。国内の殻に閉じこもらず世界で売れる商品をつくれば、日本の衣料産業には生き残りの余地がある。そんな思いを持つ人のプラットフォームになろうとするベンチャー企業が動き出している。

 第1回「衣料品の国産率わずか3% 工程分散、産地の疲弊進む 」、第3回「下請け脱却へ工場直販 ファクトリーブランドに活路」もあわせてお読み下さい。




国内の繊維産業全体が競争力を失ったわけではない。個別の工場をみると、欧米の高級ブランドから生産を受注するような生地工場や縫製工場がある。世界で高い評価を受けるデザイナーもいる。かつてこの間をつないでいた卸や商社は海外に事業基盤を移したため、足元では国内工場をきめ細かく管理できていないのが現状だ。

隙間を埋めるのは、IT(情報技術)で工場とデザイナー、アパレル会社をつなぐベンチャー企業だ。その一社が、熊本市のシタテル(河野秀和社長)。経済産業省やコンサルティング会社ローランド・ベルガーの日本法人(東京・港)と組み、「服づくり4.0」というプロジェクトを立ち上げた。

シタテルが持つ100カ所以上の提携工場の情報と、デザイナーの希望する条件をマッチング。工場の縫製レベルや対応できる種類、料金、リードタイム、稼働状況などを独自のアルゴリズムで分析し、デザイナーに提案する。シタテルは工程管理なども担い、デザイナーが安心して発注できる仕組みを構築する。

3月にはメンズブランド「ジュンハシモト」と組み、シタテルとの協業でつくりあげたコレクションを「アマゾン ファッション ウィーク東京 2017A/W」に出店。海外工場に比べて半分程度に納期が短縮できる国内縫製の強みや、消費者からの反応などからマッチングの効果を検証した。今後は世界で販売するための施策についても検討するという。

縫製職人と消費者をつなぐサービスもある。ステイト・オブ・マインド(東京・渋谷、伊藤悠平社長)が運営する「nutte(ヌッテ)」。消費者が衣類や服飾雑貨などの製作を縫製職人に依頼できる。また電子商取引(EC)サイト運営のラクーンは、アパレルメーカーが小ロットでも国内縫製工場に発注できるサービス「SDファクトリー」を展開している。

国内の縫製工場の中にはホームページを持たず、いまだにファクスで図面をやりとりするような会社もある。稼働状況の監視などにあらゆるモノがネットにつながる「IoT」を活用するなど、工場自身もITを使った経営革新が求められている。

[日経産業新聞 2017年5月2日付を再構成]

第1回「衣料品の国産率わずか3% 工程分散、産地の疲弊進む 」、第3回「下請け脱却へ工場直販 ファクトリーブランドに活路」もあわせてお読み下さい。

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