衣料品の国産率わずか3% 工程分散、産地の疲弊進む
よくわかる 国産ファッション(1)

日本で流通する衣料品の国産比率はわずか3%に満たない。産地が老齢化し、コスト低減圧力で疲弊する中、官民が国産ファッション復活へと動き始めた。認証制度による販売促進や、IT(情報技術)を活用したデザイナーとのマッチング、工場自らがブランドを立ち上げる動きもある。国産ファッション衰退の経緯と現状、課題を追う。
第2回「世界めざし生産改革 ベンチャー企業がIT活用」もあわせてお読みください。
1950年代~70年代にかけて、繊維産業は糸や生地を大量に生産・輸出して外貨を稼いだ。80年代になると国内のアパレル産業も勃興し、日本中で縫製事業者が増産に追われた。バブルも重なった90年には国内衣料品の市場規模は15兆円にも達し、旺盛な需要が生産を支える構図となった。

それが90年代、コスト低減のため、縫製工程などの中国への移管が進んだ。海外で大量生産した商品を安価で販売するファーストリテイリングのようなSPA(製造小売り)が成長し、衣料各社も海外への生産移管を競った。この結果、90年代初めに50%あった国産比率は3%まで低下した。
経済産業省によると、90年に約15兆円だった衣料品市場規模は2010年に約10兆円まで縮小した。一方、国内生産と輸入を合わせた国内供給量は20億点から40億点に増加。衣料品の商品単価が3分の1に下がった計算だ。それを実現させたのが海外生産シフトだ。
これまで日本の衣料品会社は「渡り鳥」のような生産地の移管を進めてきた。中国の人件費が高まると、ベトナムやバングラデシュ、ミャンマーなどに生産を移す。ただ、その手法はいつか行き詰まる。国内需要に頼る日本各社は、スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)など世界規模の巨艦に調達力で勝てない。
繊維産業に関わる事業者数も90年比で約4分の1に減少した。経営者の高齢化も進み、手を打たなければ今後さらなる廃業などが進む見通しだ。
「日本は繊維産業が行程ごとに地理的に分散していて、非効率だ」。衣料品業界に詳しいコンサルティング会社、ローランド・ベルガーの福田稔プリンシパルは指摘する。地理的集約があるイタリアや、業界団体が仕事の割り振りも手掛ける米国などと異なり、日本は工場が散らばる。川上から川下までばらばらに動いてきた過去がある。
時が経てば国内繊維産業はより競争力を失いかねない。時間がない中、国産ファッションの再興にやっと動き出した官民がクリアすべき課題は小さくない。
佐竹実、岩戸寿、原欣宏、奥津茜、沖永翔也が担当します。
[日経産業新聞 2017年5月1日付を再構成]
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