/

充実の女子バドミントン 公正で厳しい競争が強くする

編集委員 北川和徳

卓球に続いて先月は水泳、今月は陸上、まもなくバドミントンとレスリング、柔道も始まる。この夏、各競技の世界選手権が続々と開催されている。世界陸上と世界水泳のある夏季五輪開催の前年と翌年はいつも同じ状況ではあるが、例年以上に関心を持って見てしまうのは、次に東京五輪が控えているからだろう。日本のアスリートの強化は順調に進んでいるのか。3年後の東京でのヒーロー、ヒロイン候補は誰なのか。

予想以上のレベルアップも

オーストラリア・オープン女子シングルスで優勝した奥原(右)と準優勝の山口=共同

そんな興味を持って各大会を見ていて、あらためて感じるのは、一部の種目で日本が予想以上にレベルアップしていることだ。それは同時に3年後の大舞台に立つための激しい競争も意味している。

10代選手の台頭が著しい卓球女子のシングルスに五輪で出場できるのは2人しかいない。10秒0台の記録を持つスプリンターが6人を数えるまでになった陸上男子100メートルの出場枠も3人。メダル有望種目となった400メートルリレーの決勝を走れるのはもちろん4人。これから3年間、仲間とのハイレベルな代表争いが続く。それを見るのはとても楽しみではあるが、本番までに消耗してしまわないものかと心配にもなる。

21日から開催されるバドミントンの世界選手権(英グラスゴー)でも、そんな意味で注目している種目がある。昨年のリオデジャネイロ五輪で奥原希望(22、日本ユニシス)が銅メダルを獲得した女子シングルスだ。

リオでは奥原と山口茜(20、再春館製薬所)が準々決勝でぶつかり、奥原が勝ってこの種目で日本勢初のメダル獲得につなげた。今回は世界ランキング1位の台湾選手が不在のため同2位の山口が第1シード。奥原も五輪後に苦しんだ右肩の故障が回復して世界ランク9位で出場する。そしてもう1人、5年前のロンドン五輪代表である26歳の佐藤冴香(ヨネックス)が同13位、2人を脅かすところまで復活してきた。

佐藤、少しずつ輝き取り戻す

リオ五輪に出場していない佐藤の存在を知っている人なら、ロンドン五輪での涙の棄権を覚えているだろう。決勝トーナメント1回戦の第1ゲーム。14-10とリードして、シャトルを追ってジャンプした着地で左膝を内側にひねって倒れた。痛みをこらえて足を引きずりながらプレーを続けたが、15-14になったところでベンチの判断で強制的に棄権。泣きながら車椅子で会場から運び出された。

左膝前十字靱帯を断裂、内側側副靱帯と半月板を損傷する大けがだった。約1年間競技から離れることになり、10位台だった世界ランクも失った。後輩の奥原と山口が佐藤を追い越していった。「あせりました。(2人が)しっかり結果を残しているので、また自分があの舞台に立てるのかと不安になった」と振り返る。

小柄な奥原、山口と違って身長170センチの長身で左利き。攻めまくる超攻撃的なプレーが持ち味だったが、ケガの影響でそれもうまくいかなくなった。「ラリーをしながら相手を動かしてチャンスになったら一気にスピードを上げて攻める」という粘りのスタイルに変えた。試合展開に合わせて戦い方を考える柔軟さも身につけ、少しずつ輝きを取り戻していった。

代表2枠のリオ五輪への出場は逃したが、昨年12月の全日本総合では決勝で山口を2-0で下して初制覇。今年は6月のインドネシア・オープンで山口や現在世界ランク3位の成池鉉(韓国)ら強豪を次々と倒して念願のスーパーシリーズ(SS)初優勝を果たした。世界選手権に向けて「シード選手を倒してメダルを取るチャンスは十分にある」と意気込む。

女子単、世界20位内に6人

ダブルスでも高橋礼(右)、松友組を筆頭に世界ランク11位までに4組が続く=共同

世界ランク15位の大堀彩(20、トナミ運輸)を加えた4人が世界選手権のシングルスに出場する。このほかにも日本の女子は同18位の三谷美菜津(25、NTT東日本)、20位の川上紗恵奈(19、北都銀行)を含めて8月10日付の世界ランクで20位内に6人が名を連ねる。ダブルスもリオで金メダルに輝いた高橋礼華(27)、松友美佐紀(25)=ともに日本ユニシス=のタカマツペアを筆頭に世界ランク11位までに4組が続く。

これだけハイレベルなメンバーから3年後の五輪代表はどう決まるのか。日本の各選手が今の世界ランクを維持すれば、女子の代表枠はシングルス、ダブルスともに2となる見込み。ポイントは五輪出場枠が決まる20年5月ごろの世界ランク。ここで16位内に入り、さらに日本勢で2番手以上にいることが代表レースを生き残る条件となるはずだ。

その世界ランクは直近1年間に出場して最も高いポイントを得た10大会のポイント合計で決まり、毎週更新されている。上位にいくには高ポイントを稼げる世界選手権やスーパーシリーズなどグレードの高い大会への出場が必要だが、それは日本代表Aのメンバーに限られる。

代表Aに確実に選ばれる条件は、全日本総合での決勝進出(ダブルスは優勝)、または全日本総合の終了時に日本ランク1位でいること。ただし、その後の大会の成績などによっては代表の見直しもある。長くて緊張感を強いられる戦いが続く。

欠かせないライバルの存在

リオの前にはダブルスでアジア選手権に優勝すれば2枠目として五輪出場を果たせた日本のペアをタカマツペアが決勝で破ってその道を阻むというドラマもあった。松友は「ここで負けていたら、金メダルなんて絶対に取れない」と話した。そして3カ月後にリオで頂点に立った。敗れた福万尚子(25)、与猶くるみ(24)=ともにヨネックス=のペアの夢も東京へと続いている。今回の世界選手権には世界ランク11位で出場する。

公正で厳しい競争がここまで日本のレベルを引き上げてきたのは間違いない。佐藤は「(山口と奥原に)追いつかないと五輪を目指せない。互いに刺激になっていることが日本が強くなった要因だと思う」と話す。それはバドミントン女子に限らず、卓球でも陸上でもさまざまな競技で共通することだと思う。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン