DeNA、起業した新卒組、広い視野にひかれ修業

2017/8/15 6:30
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「年功序列がなく、1年目から責任者だった。やり抜く力を鍛えられました」。スマートフォン(スマホ)ゲームの開発・運営や屋外レジャーの予約アプリを手掛けるアカツキ(東京・品川)の塩田元規社長(34)はこう話す。一橋大学大学院のMBAコースを修了した2008年に新卒でディー・エヌ・エー(DeNA)に入社。ネット広告の営業マネージャーなどを任され、2年半後の10年6月にアカツキを起業した。

imio(イミオ)の倉林啓士郎社長

Donuts共同創業者の根岸心取締役

アカツキの塩田元規社長

DeNAのほかにもコンサルティング会社など約10社から内定を得ていた。従業員数が300人ほどだったDeNAを選んだのは現会長の南場智子氏(55)ら経営陣の「目線が高いと感じたから」。後に一時代を築くソーシャルゲームをはじめ、携帯端末で様々なネットサービスが花開くのを見越して着々と手を打っていた。「将来は起業をしたい」と考えていた塩田氏には最良の学びの場に見えた。

南場氏や共同創業者の川田尚吾氏(48)らのようにコンサル出身者が多いこともあり、この頃はコンサルや大手企業の内定を蹴ってDeNAに入る若者が多くいた。塩田氏も「同期がとてつもなく面白かったことも選んだ理由」と言う。障害者向けの就労事業などを手掛けるLITALICOの中俣博之取締役(32)はDeNA時代の同期。今も互いに仕事の相談をする。

塩田氏の入社と前後して07年にDeNAを飛び出したのが、勤怠管理や動画サービスなどを運営するDonuts(東京・渋谷)の西村啓成社長(38)と根岸心取締役(38)だ。2人は04年にDeNAに入社した新卒採用の1期生。根岸氏は「物事をどんどん進めていくベンチャーのスピード感と、実務から組織の作り方まで起業に必要なことを学んだ」と振り返る。

根岸氏が語る「事業範囲を限定しない」方針はDeNAと重なる。Donutsは勤怠管理・経費精算システムやゲームも扱う。IT(情報技術)ベンチャーが好む東京・六本木ではなく交通の便が良い新宿にオフィスを置くなど「合理的かどうかで判断する」点も通ずる。

スポーツのブランドを展開するイミオ(東京・文京)の倉林啓士郎社長(36)は東京大学に在学中の03年からDeNAでインターンシップ(就業体験)を経験し、そのまま根岸氏らと同じ04年に入社した。「オークションサイト『モバオク』の立ち上げに関わり、新事業を作る醍醐味を味わった」と言う。

DeNAは2400人が働く大企業になった。最近はゲーム市場の成熟やまとめサイトでの盗用問題など逆風が目立つ。ベンチャーの裾野が広がり、優秀な人材がみなDeNAを目指すわけでもなくなった。起業の意思と高い知識を備えた若者に挑戦の場を提供し、自社の成長にもつなげる――。「永久ベンチャー」の看板を掲げ続けるには、刻んできた歴史を見つめ直すことも大切かもしれない。

(佐藤浩実、桜井芳野)

[日経産業新聞 8月15日付]

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