2019年1月19日(土)

JDI・東入来CEO、再建へ大ナタ

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2017/8/10 6:30
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「白山の建設を今すぐ止めてください」。16年1月中旬。JDI本社の会議室の空気は、テレビ電話ごしの米アップルの調達担当者の一言に凍り付いた。この会議が、今に続くJDI迷走の起点となった。

JDIは15年3月にアップルからの前受け金を得た上で1700億円を投じてスマートフォン(スマホ)用液晶パネルの白山工場(石川県白山市)の建設を決めた。「iPhone6」が大ヒットし、16年も17年もiPhoneは伸び続けるという「幻想」を両社で共有した。

しかし15年9月発売の「6s」は機能革新が乏しいと受け取られ、販売が振るわず、前年比2割減と急ブレーキがかかった。アップルはiPhoneのデザインを刷新するために有機ELパネルに傾倒。すぐさま液晶パネルの白山工場は「不要」と判断し工事中止を求めた。ただこの時点で製造装置はすでに発注済みで、膨大なキャンセル料が発生する段階だった。

それまでアップルに「有機ELは将来の技術だ」と告げられ、液晶パネル前提で事業計画を立てていたJDI。しかし「6s」の不振で計画の前提が崩壊した。

JDIの取締役会は中期の経営計画を筆頭株主の産業革新機構、さらに機構を所管する経済産業省に報告し、承認を得てきた。取締役会単独で工場建設中止といった大きな決断は下せない。協議を続けている間に白山工場の建屋はほぼ完成してしまった。

白山工場が稼働すれば国内に6工場を抱え、過剰設備は避けられない。JDIの本間充会長(当時)は旧式ラインの停止を決断。茂原工場(千葉県茂原市)と東浦工場(愛知県東浦町)の生産ラインの一部停止と国内での早期退職者の募集に踏み切ろうとした。だが、思わぬところから「待った」がかかった。

「アベノミクスの失敗を想起させる経営判断は慎んでほしい」。経産省幹部が苦言を呈したのだ。とりわけ雇用は安倍政権が重視する経済指標。「国策企業」の人員削減に神経をとがらせた。革新機構幹部も経産省の意見に同調、16年3月の構造改革案は「中途半端なまま終わってしまった」(関係者)。

12年に日立製作所と東芝、ソニーの液晶事業を統合して誕生したJDI。母体3社の国内外の工場は抜本的なリストラに手を付けずに温存されてきた。競合の韓国や中国のディスプレーメーカーが政府支援を得ながら最新設備を次々と導入するのを横目に、JDIは高コスト体質を引きずり、生産性の低い旧式ラインを使い続けてきたのだ。

設立から5年続いた主体性のない経営によって蓄積された「負の遺産」。東入来氏が率いる現経営陣は9日発表の構造改革案で「決められない経営」との決別を誓った。海外工場の大幅縮小、旧式設備の減損、液晶パネルの在庫見直しなどで計上する1700億円の特別損失は旧経営陣が先送りしてきた「ツケ」の支払いともいえる。

JDI入社4カ月で抜本的な構造改革案を示した東入来氏への社内外の期待は大きい。ただ競合を見渡すと、韓国勢や中国勢は豊富な資金力を研究開発と設備投資に投じてJDIの行く手を阻む。新生JDIが成長軌道を描くためには、競合から受注を奪い取る競争力も欠かせない。

(細川幸太郎、斎藤美保)

[日経産業新聞 8月10日付]

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